障害福祉事業はWAM融資を利用できる?福祉医療機構の福祉貸付を解説
障害福祉事業の開業資金を調べていると、日本政策金融公庫と並んで「WAM(ワム)」という名前を目にすることがあります。
WAMとは、独立行政法人福祉医療機構(Welfare And Medical Service Agency)が実施している、福祉・医療分野向けの公的な融資制度です。一般的な創業融資とは少し性格が異なり、社会福祉施設や福祉サービス事業の施設整備などを対象に、長期・固定・低利の資金を供給しています。
2026年度のWAM「福祉貸付事業 融資のごあんない」では、障害福祉サービス事業、障害者支援施設、障害児通所支援事業などが融資対象の施設・事業として掲載されています。つまり、生活介護、共同生活援助、就労系サービス、放課後等デイサービスなどでも、事業内容や法人形態、整備内容などの要件を満たせばWAM融資を検討できる可能性があるということです。
ただし、「障害福祉事業ならWAMから借りられる」というわけではありません。対象となる法人、資金使途、融資率、担保、申込時期などを確認したうえで、WAM側の審査を受ける必要があります。
この記事では、宮城県・仙台市で障害福祉事業の開業を検討している方に向けて、WAMの福祉貸付について、対象事業、対象法人、融資対象となる資金、日本政策金融公庫との違い、金利の確認方法までを整理してお伝えします。
障害福祉事業の資金調達全体を先に確認したい方は、障害福祉事業の資金調達完全ガイド|融資・補助金・助成金を解説もあわせてご覧ください。
結論|障害福祉事業・放課後等デイサービスでもWAM融資を検討できる
この記事の結論
障害福祉事業や障害児通所支援事業は、WAM福祉貸付の対象として明示されている事業があります。放課後等デイサービスも障害児通所支援事業の一つなので、WAM融資の検討対象になり得ます。
ただし、実際に利用できるかどうかは次の4点を整理してはじめて見えてきます。
- 開業するサービスが融資対象事業に入っているか
- 自社の法人形態が対象となっているか
- 予定している支出が融資対象資金に該当するか
- 契約・着工前にWAMへ相談できているか
2026年度の公式資料では、障害者福祉分野として、居宅介護、重度訪問介護、短期入所、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助、自立生活援助、就労定着支援、就労選択支援、一般相談支援、特定相談支援、地域活動支援センター、障害者支援施設など、幅広い事業が掲載されています。児童福祉分野では、障害児通所支援事業が掲載されており、放課後等デイサービスもここに含まれます。
一方で、WAMの資料は「対象施設・事業」と「融資を受けられる方」を組み合わせて確認する必要があります。同じ障害福祉分野でも、事業ごとに認められている法人種別が異なる場合があるためです。さらに、実際の融資額は単純な一律上限ではなく、対象となる所要額、補助金、融資率、担保評価額、償還可能性などを踏まえて審査されます。
特に見落としやすいのが4番目の「契約・着工前の相談」です。WAMの2026年度案内では、貸付内定前に今回の計画に係る工事請負契約、土地建物の売買契約、工事着工などを行った場合は、原則として融資対象外になると案内されています。「物件が決まってから融資を考える」では遅くなることがあるため、候補物件や整備計画が見えてきた段階で、早めに確認しておくほうが安全です。
WAM(福祉医療機構)の福祉貸付とは
WAMとは独立行政法人福祉医療機構のこと
WAMは、独立行政法人福祉医療機構の略称です。福祉・医療分野の政策的な支援を担う独立行政法人で、福祉貸付のほか、医療貸付、経営サポート、WAM NETによる情報提供などを行っています。
福祉貸付事業について、2026年度の公式案内では、特別養護老人ホーム、保育所、障害のある方を支援する施設などの社会福祉施設を整備する際に必要となる建築資金等を「長期・固定・低利」で融資すると説明されています。一般の民間銀行が幅広い業種を対象として融資するのに対し、WAMは福祉・医療分野に特化している点が大きな特徴です。
WAM融資は「福祉事業なら何でも使える融資」ではない
WAMの福祉貸付は、福祉事業者向けの制度ではありますが、単なる業種別の創業ローンではありません。審査では、たとえば次のような項目が確認されます。
- どの福祉サービスを行うのか
- どの法人が事業主体になるのか
- 新築、改築、購入、賃借など、どのような整備を行うのか
- 建築費や設備備品など、何に資金を使うのか
- 補助金を利用するのか
- 担保をどのように設定するのか
- 開業後の収支から返済できるのか
- 行政側の意見書等を含む必要書類を準備できるか
障害福祉事業では、指定申請を受ける前から物件、内装、消防設備、人員採用などの準備が必要になることがあります。WAMを利用する場合は、開業スケジュールと融資手続を別々に考えないことがポイントです。
障害福祉・障害児通所支援でWAM融資の対象となる事業
障害福祉サービス事業は幅広く掲載されている
WAMの2026年度「融資のごあんない」では、障害者福祉分野の対象施設・事業として、障害福祉サービス事業が幅広く掲載されています。代表例を整理すると次のとおりです。
| 分野 | 2026年度資料に掲載されている主な事業 |
|---|---|
| 訪問系 | 居宅介護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援 |
| 日中活動系 | 生活介護、自立訓練 |
| 就労系 | 就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、就労選択支援 |
| 居住系 | 共同生活援助 |
| その他 | 短期入所、自立生活援助など |
| 相談・地域支援 | 一般相談支援、特定相談支援、地域活動支援センターなど |
| 施設系 | 障害者支援施設 |
ここで注意したいのは、「事業名が表にあること」と「自社がそのまま融資を受けられること」は別だという点です。法人種別や整備内容、貸付条件の確認が必要で、最終的な融資可否・融資額はWAM等の審査によります。
放課後等デイサービスは障害児通所支援事業として検討対象になる
放課後等デイサービスは、児童福祉法上の障害児通所支援事業に含まれます。WAMの2026年度資料では、児童福祉分野の融資対象として「障害児通所支援事業」が明記され、その「融資を受けられる方」の欄には「法人」と記載されています。
このため、株式会社、合同会社、一般社団法人などで放課後等デイサービスを開業する場合でも、まずはWAMへ相談し、具体的な整備計画が対象となるか確認する余地があります。ただし、実際には物件の取得方法、工事内容、設備備品、事業計画、指定申請の見込みなどを含めて確認されます。
放課後等デイサービスの開業準備全体については、放課後等デイサービスの開業・指定申請総合ガイドも参考にしてください。
生活介護・共同生活援助・就労系サービスも対象事業として掲載
生活介護、共同生活援助(グループホーム)、就労移行支援、就労継続支援なども、2026年度資料の障害者福祉分野に掲載されています。これらのサービスは、放課後等デイサービスと比べて建物整備費が大きくなるケースもあります。
たとえば共同生活援助で建物を取得・改修する場合や、生活介護で一定規模の建物・設備を整備する場合には、長期の施設整備資金を扱うWAMの制度と相性がよいケースがあります。一方、賃貸物件を小規模改修して開業する計画では、必要資金の内容によって日本政策金融公庫や自治体制度融資のほうが検討しやすいこともあります。
融資制度は「金利が低いほうを選ぶ」というより、計画する事業・法人・資金使途に合う制度を選ぶことが先です。
WAM融資の対象となる法人は事業ごとに異なる
「法人ならすべて同じ条件」ではない
WAMの2026年度資料では、「融資の対象施設・事業」と並んで「融資を受けられる方」が示されています。障害児通所支援事業では「法人」と記載されていますが、障害者福祉分野では事業ごとに社会福祉法人、日本赤十字社、医療法人、一般社団法人など、対象主体の記載が異なります。
したがって、株式会社や合同会社で障害福祉事業を行う場合に、「障害福祉サービス事業と書いてあるから当然利用できる」と判断するのは避けたほうがよいでしょう。WAMの公式資料でも「主な対象施設・事業」とされ、詳しくは機構への問い合わせが案内されています。
放課後等デイサービスでは法人形態だけで判断しない
放課後等デイサービスを開業する場合、指定申請上は法人格が必要です。一方、WAM融資では法人格の有無だけでなく、今回の計画自体が福祉貸付の対象になるかが問題になります。たとえば次のような確認が必要になります。
- 障害児通所支援事業としての開設計画になっているか
- 指定権者との事前相談が進んでいるか
- 建物の用途・設備計画が現実的か
- 必要な人員を配置できる見込みがあるか
- 開業後の収支から返済できる計画か
- 工事や売買契約を先行していないか
資金調達だけ先に決めるのではなく、指定申請と開業準備を同時並行で組み立てる必要があります。
WAMの融資対象となる資金
WAMの福祉貸付では、大きく「設置・整備資金」と「経営資金」があります。ただし、どの施設・事業でもすべての資金が利用できるわけではありません。実際に予定している支出が対象になるかは個別確認が必要です。
建築資金
2026年度の案内では、建築資金として新築、改築、拡張、改造・修理、建物の購入、建物の賃借といった整備が示されています。対象費用には、一般的な建築工事費のほか、大型設備等工事費、特殊工事費、設計監理費などが含まれます。
障害福祉事業では、物件そのものの取得費だけでなく、バリアフリー化、間仕切り、トイレ、訓練スペース、消防設備への対応など、開業前にまとまった工事費がかかることがあります。もっとも、指定基準上必要だからといって、その工事費が自動的にWAM融資の対象になるわけではありません。計画段階で対象経費を確認する必要があります。
設備備品整備資金
機械器具、備品の購入、取付工事等に要する費用も、設備備品整備資金として示されています。障害福祉事業で考えられるものとしては、サービス内容に応じて、訓練用設備、事務機器、福祉機器などが候補になります。ただし、自動車や消耗品を含め、個々の費用が対象となるかは一律には判断できません。見積書を基にWAMへ確認するのが確実です。
土地取得資金
施設の用に供する土地の取得費についても、一定の場合に対象となります。ただし、2026年度案内では、先行して土地を取得するために利用する場合は、その取得地で建物整備を伴う場合とされています。土地だけを先に買っておけばよい、という制度ではありません。
経営資金
2026年度資料では、「施設又は事業の経営に必要な資金」も経営資金として示されています。また、2026年8月3日改定の主要貸付利率表では、社会福祉事業施設・介護関連施設・在宅サービス事業等の経営資金について「5年以内」、利率「年2.800%」という区分が掲載されています。ただし、障害福祉事業のどのケースにこの区分・利率が適用されるかは、事業種別や借入内容によって確認が必要です。
「開業後の人件費をすべてWAMの経営資金でまかなえる」と考えず、対象可否を相談したうえで資金計画を組みましょう。障害福祉事業では、開業時に利用者が一気に定員まで埋まるとは限りません。また、障害福祉サービス等報酬の入金にも時間差があります。
開業後の資金繰りについては、障害福祉事業の運転資金はいくら必要?報酬入金までの資金繰りと融資額の考え方で詳しく解説しています。
WAMの融資限度額はどう決まる?
WAM融資は、「この事業なら上限○万円」という単純な制度ではありません。2026年度案内では、融資限度額について、基本的に次の2つで算出した額のうち低いほうとされています。
障害児通所支援・障害福祉サービス事業の通常融資率
2026年度の融資案内の融資率表では、障害児通所支援事業、障害児入所施設、障害児相談支援事業、障害福祉サービス事業、障害者支援施設、一般相談支援事業、特定相談支援事業、移動支援事業、地域活動支援センターなどが「80%」の区分に掲載されています。
したがって、放課後等デイサービスや障害福祉サービス事業の施設整備では、2026年度資料上、通常の融資率として80%が一つの基準になります。ただし、対象費用の全額に単純に80%を掛ければ借入額が決まるわけではありません。補助金控除、担保評価、償還能力その他の融資条件によって変わります。
優遇融資で融資率が変わる場合もある
WAMには国の政策に応じた優遇融資があります。2026年度資料では、たとえば社会福祉施設等施設整備費国庫補助金の交付が行われる障害福祉サービス事業所・障害者支援施設の一定の整備について、通常80%の融資率を85%とする優遇措置が掲載されています。また、木材利用による施設整備など、条件に応じて融資率が引き上げられるメニューもあります。
ただし、優遇融資にはそれぞれ対象施設、要件、取扱期間があります。通常融資と混同しないようにしてください。
WAMの金利は何%?2026年8月3日時点の確認方法
金利は借入期間・資金区分などで変わる
WAMの金利は一律ではありません。2026年8月3日改定の「福祉貸付主要貸付利率表」では、設置・整備資金について、施設・事業の種類や償還期間ごとに利率が細かく設定されています。
たとえば「社会福祉事業施設」の固定金利欄では、償還期間10年以内について年2.600%が掲載されています。償還期間が長くなると利率も段階的に変わります。一方、経営資金については、社会福祉事業施設・介護関連施設・在宅サービス事業等について、5年以内・年2.800%という記載があります。
注意:これらの数字をそのまま「放課後等デイサービスの金利は2.6%」などと読み替えないでください。実際にどの施設・事業区分に該当するか、固定金利か10年経過毎金利見直しか、優遇措置の対象になるかなどによって適用利率が変わります。
保証人不要制度を利用する場合は上乗せがある
2026年8月3日改定の利率表では、保証人不要制度を利用する場合、掲載利率に年0.050%を上乗せするとされています。保証人を付けるかどうかだけで判断するのではなく、担保・保証条件とあわせて確認してください。
金利は公開直前・申込直前にWAM公式サイトで再確認する
金利は改定されることがあります。この記事では2026年8月3日改定の利率表を確認していますが、実際に融資を申し込む時点ではWAM公式サイトの「金利情報」で最新の主要貸付利率表を確認してください。特に資金計画や返済シミュレーションを作るときは、古い金利を使うと毎月返済額や総返済額の見込みがずれてしまいます。
WAMの返済期間・据置期間はどう考える?
WAMの特徴の一つは、施設整備に応じた長期融資です。ただし、償還期間は建物の構造、資金の種類、対象施設などによって異なります。「WAMなら必ず30年返済にできる」という制度ではありません。
据置期間とは、一般に元金返済を一定期間据え置く期間をいいます。開業直後は利用者数が安定しない障害福祉事業では、据置期間が資金繰りに影響することがあります。一方、据置中であっても利息負担が生じるのが通常です。返済開始が後になるからといって、資金負担がなくなるわけではありません。
WAMの2026年度資料では、優遇融資の一部について30年以内、据置3年以内といった条件も掲載されていますが、通常条件は施設・構造等ごとに確認する必要があります。開業計画では「借りられる期間」だけでなく、毎月の返済額を事業収支に入れて検討しましょう。
WAM融資と日本政策金融公庫の違い
障害福祉事業の創業では、WAMと日本政策金融公庫のどちらを検討すべきか迷うことがあります。両者は公的な資金調達先ですが、制度の性格は同じではありません。
| 比較項目 | WAM福祉貸付 | 日本政策金融公庫の創業融資 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 社会福祉施設・福祉サービス事業等 | 幅広い創業者・中小事業者 |
| 特徴 | 福祉分野に特化した施設整備等の融資 | 創業全般の設備資金・運転資金を検討しやすい |
| 対象事業 | 対象施設・事業が定められている | 原則として幅広い業種が対象 |
| 法人・事業主体 | 施設・事業ごとに対象主体の確認が必要 | 法人・個人事業者を含め制度要件により判断 |
| 施設整備 | WAMの中心的な分野 | 設備資金として検討可能 |
| 運転資金 | 対象となる経営資金あり。個別確認が必要 | 創業時の運転資金を含め検討しやすい |
| 金利 | 福祉貸付利率表により施設区分・期間等で設定 | 公庫所定利率。条件により異なる |
| 手続 | 福祉施設・整備計画に即した資料が多い | 創業計画書、見積書等を中心に審査 |
| 契約前の注意 | 貸付内定前の工事・売買契約等は原則対象外になるため特に注意 | 個別案件で公庫への事前相談が必要 |
| 専門性 | 福祉施設整備に特化 | 創業・小規模事業全般 |
小規模な創業では日本政策金融公庫が検討しやすいこともある
たとえば、賃貸物件で放課後等デイサービスを新規開業し、内装工事、車両、備品、採用費、開業後数か月分の人件費などをまとめて調達したい場合があります。このようなケースでは、日本政策金融公庫の創業融資のほうが、創業時の設備資金・運転資金をまとめて相談しやすい場合があります。
日本政策金融公庫については、障害福祉事業で日本政策金融公庫の創業融資を利用する方法|開業資金の借入を解説で詳しく解説しています。
建物取得や大規模整備ではWAMを確認する価値がある
一方、建物を取得する、施設を新築する、大規模な改修・設備整備を伴うといった計画では、福祉施設整備を対象として長期資金を供給するWAMを確認する価値があります。共同生活援助、生活介護、障害者支援施設など、建物整備の比重が大きい事業では特に検討余地があります。
最初から「公庫かWAMか」を一つに決める必要はありません。資金使途ごとに整理し、必要に応じて民間金融機関との協調融資も含めて組み立てる方法があります。
WAMには協調融資制度もある
WAMの2026年度案内では、民間金融機関との協調融資制度も紹介されています。福祉医療機構と民間金融機関が連携して融資を行う仕組みで、WAMだけでは事業費全額を賄えない場合や、施設整備と運転資金を組み合わせる場合などに検討されます。
障害福祉事業の開業では、たとえば建物取得・工事費、設備備品費、車両費、採用・研修費、家賃、給与、社会保険料、広告費、開業直後の運転資金というように、資金が分かれます。一つの融資制度ですべてを賄うより、資金の性質に合わせて複数の調達手段を整理したほうが現実的なケースもあります。
ただし、複数借入を行う場合は返済額も増えるため、借入可能額ではなく返済可能額から考える必要があります。
WAM融資を検討するときの手続の流れ
WAMの2026年度案内では、まず融資相談を行い、その後、借入申込、受理・審査、貸付契約・資金交付、完成報告という流れが示されています。
1.まず融資相談を行う
WAMは、借入を検討している場合、まず融資相談窓口へ連絡するよう案内しています。相談時の主な資料として、2026年度案内には次のようなものが掲載されています。
- 融資相談票(整備計画・資金計画)
- 決算書(直近2か年分)
- 残高試算表
- 収入支出償還計画表
- 計画敷地の公図、住宅地図、登記事項証明書等
- 計画建物の配置図・平面図
- 法人新設の場合の役員一覧
- 母体法人がある場合はその概要資料
- 並行して別計画がある場合の関係資料
- 法人パンフレット等
法人新設の場合は過去の決算書が存在しないため、相談時に必要となる資料をWAMへ確認してください。
2.指定権者との調整も並行する
借入申込時には、施設を管轄する都道府県市等からの意見書などを添付して申し込むと案内されています。宮城県・仙台市で障害福祉事業を始める場合には、融資だけ進めるのではなく、指定権者との事前相談、物件基準、人員配置、消防・建築関係なども並行して確認する必要があります。
放課後等デイサービスであれば、放課後デイサービス指定申請流れを徹底解説もあわせて確認すると、開業までの順番を整理しやすくなります。
3.審査
2026年度案内では、借入申込書がWAMに到着し内容確認を終えてから、融資審査を了するまで「1か月程度」とされています。ただし、償還・担保などに問題が見受けられる場合は、さらに時間がかかることがあります。また、融資審査の結果、条件が付される、借入額が減額される、融資を断られる場合があることも明記されています。開業予定日から逆算して、余裕をもって動く必要があります。
4.貸付契約・資金交付
審査後、貸付契約、抵当権設定などの手続を進めます。2026年度案内では、貸付契約の締結や抵当権設定手続などに3か月程度必要となる場合があるとされています。原則として抵当権設定後の資金交付とされ、希望時期に資金交付できない場合があるため、民間金融機関からのつなぎ資金の活用も案内されています。
最重要|貸付内定前に工事や売買契約を進めない
WAM融資を検討する場合、かなり重要なのが契約のタイミングです。2026年度の公式案内では、貸付内定前に、今回の計画に係る次の行為を行った場合、原則として融資対象外になるとされています。
- 工事請負契約
- 土地・建物の売買契約
- 工事着工
さらに審査段階の案内では、貸付内定通知書が届くまでは、設備備品費に係る購入契約や、土地建物売買契約の締結前の着手金等の支払いも行わないよう注意されています。
放課後等デイサービスなどの開業では、良い物件が見つかると早く契約したくなります。しかし、WAMを利用する可能性があるのであれば、契約前に融資相談を行わないと、後からWAM融資に切り替えられない可能性があります。一方、障害福祉事業の指定申請では物件を確保しなければ話が進まない場面もあります。
そのため、
指定権者への事前相談 → WAMへの融資相談 → 物件・工事契約のタイミング確認
という順番を意識して進める必要があります。
放課後等デイサービスでWAMを検討するときの考え方
放課後等デイサービスでは、施設整備費だけを見て資金計画を立てると不足しやすくなります。一般に開業時には、次のような費用が発生します。
物件取得費・敷金保証金・内装工事・消防設備・備品・車両
採用費・開業前人件費・指定後の人件費
家賃・水道光熱費・通信費・保険料・利用者獲得までの運転資金
WAMの対象となる費用と、対象外または別の融資で準備したほうがよい費用を分けて考える必要があります。たとえば施設整備はWAM、開業直後の人件費・家賃等は日本政策金融公庫や自己資金という組み合わせも考えられます。
放課後等デイサービスの必要資金については、放課後等デイサービスの開業資金はいくら必要?自己資金・融資・運転資金を解説も参考にしてください。
宮城県・仙台市でWAM融資を検討するときのポイント
宮城県と仙台市では指定権者を確認する
障害福祉事業では、事業所所在地やサービス種別によって指定・届出の窓口が異なります。WAM融資では、借入申込書に施設を管轄する都道府県市等からの意見書などを添付する手続が示されています。
宮城県内で開設するからといって、すべて宮城県が窓口になるわけではありません。仙台市内で開設する場合は仙台市が指定権者となるサービスがあります。融資相談と同時に、今回の事業についてどの行政機関と事前調整が必要かを確認してください。
仙台市・宮城県の制度融資と比較する
WAM以外にも、宮城県や仙台市には中小企業者・創業者向けの制度融資があります。これらはWAMとは別制度です。WAMは福祉施設・福祉サービスの整備に専門性がある一方、自治体の制度融資は信用保証協会と金融機関を利用する創業・事業資金として検討する仕組みです。
仙台市の制度については仙台市で障害福祉事業を開業するときに使える融資制度、宮城県内(仙台市以外)での開業については宮城県で障害福祉事業を開業するときに使える制度融資で詳しく解説しています。あわせて確認しておくと、WAMとの比較・併用がイメージしやすくなります。
開業資金の全体像を作る際には、WAM、日本政策金融公庫、宮城県・仙台市の制度融資、民間金融機関、自己資金、補助金・助成金を分けて整理すると分かりやすくなります。補助金・助成金については障害福祉事業で使える補助金・助成金一覧にまとめています。
WAM融資を利用する前に確認したいチェックリスト
WAMへの相談前に、最低限次の項目を整理しておくと話が進みやすくなります。
- 開業する障害福祉サービスの種類が決まっている
- 法人形態が決まっている
- 開業予定地が決まっている、または候補がある
- 指定権者へ事前相談している
- 建物の新築・購入・賃借・改修のどれに該当するか整理している
- 工事費・設備費等の概算見積りがある
- 自己資金額を把握している
- 補助金を利用する場合、その予定額を整理している
- 開業後の売上・人件費・家賃等の収支計画がある
- 借入後の返済額を収支計画へ入れている
- WAMの貸付内定前に契約・着工してよいか確認している
- WAM以外の運転資金調達方法も検討している
特に、障害福祉事業では「指定が取れれば売上が立つ」だけでは収支計画として不十分です。開業直後は利用率が低いことも想定し、徐々に利用者が増える計画で返済可能性を確認したほうが現実的です。
よしだ行政書士事務所がWAM融資を含む資金調達の準備を支援します
- 指定申請と資金計画を並行して整理するご相談対応
- 事業計画書・収支計画書の作成サポート
- WAM・日本政策金融公庫・自治体制度融資など複数手段の整理
- 宮城県・仙台市の指定権者との事前相談に関するご案内
宮城県名取市を拠点に、宮城県全域を中心に東北6県からのご相談に対応しています。オンライン相談、訪問相談、土日祝日の予約相談も可能です。
まとめ
WAMの福祉貸付は、障害福祉事業の施設整備を検討するときに確認しておきたい資金調達制度です。2026年度の公式資料では、障害福祉サービス事業、障害者支援施設、障害児通所支援事業などが融資対象施設・事業として掲載されています。放課後等デイサービスも障害児通所支援事業に含まれるため、法人形態や整備内容などの要件を満たせば利用を検討できる可能性があります。
一方で、WAM融資は一般的な創業ローンと違い、対象施設、事業主体、資金使途、融資率、担保、指定権者との調整など、福祉施設整備特有の確認事項があります。特に注意したいのが、貸付内定前の工事請負契約、土地建物売買契約、工事着工等が原則として融資対象外につながる可能性がある点です。そのため、WAMを検討する場合は、物件契約や工事を進める前から相談する必要があります。
宮城県・仙台市で障害福祉事業を開業する場合、指定申請、法人設立、物件、人員配置、消防・建築、事業計画、資金計画は互いに関係しています。融資だけを切り離して考えるのではなく、開業スケジュール全体の中で資金調達を組み立てることが大切です。
指定申請、法人設立、事業計画、必要書類整理などを含めて開業準備を進めたい場合は、行政書士へ相談する方法もあります。
よくある質問
- WAM(福祉医療機構)
- 独立行政法人福祉医療機構。福祉・医療分野向けに福祉貸付・医療貸付等を行う公的機関。
- 福祉貸付
- WAMが行う、社会福祉施設・福祉サービス事業の施設整備等を対象とした融資制度。
- 指定権者
- 障害福祉サービス等の事業者指定を行う都道府県・市。宮城県内では仙台市が独自の指定権者となるサービスがある。
- 据置期間
- 借入後、一定期間、元金の返済を据え置く期間。据置中も利息は発生するのが通常。
- 協調融資
- WAMと民間金融機関が連携して行う融資の仕組み。
参考資料・出典
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2026年度 福祉貸付事業 融資のごあんない」
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「福祉貸付 主要貸付利率表(令和8年8月3日改定)」
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「福祉貸付事業 融資のごあんない(パンフレット)」公式Webページ
※制度内容・金利は変更されることがあります。実際の申込みにあたってはWAM公式サイトの最新情報をご確認ください。