放課後等デイサービスの個人情報保護・秘密保持とは?規程・同意・職員対応を解説
「学校や相談支援事業所へ、児童の情報を伝えても大丈夫なのだろうか」「職員が退職した後も、利用児童や家族についての守秘義務は続くのだろうか」——放課後等デイサービスを運営していると、こうした疑問に直面する場面が少なくありません。
放課後等デイサービスでは、児童の氏名や住所だけでなく、障害特性、診断、服薬、アレルギー、家庭状況、学校生活、個別支援計画、支援記録、相談内容、写真や動画など、非常に重要な情報を日常的に取り扱います。
そのため「個人情報保護=誰にも情報を見せないこと」と考えてしまいがちですが、それだけでは適切な支援はできません。学校、相談支援事業所、医療機関、行政などとの連携が必要な場面も多くあるからです。
大切なのは、必要な情報は適切な目的・範囲・手続で共有し、それ以外の情報はしっかり守ることです。放課後等デイサービスでは、指定基準上の「秘密保持」と、個人情報保護法上の「個人情報・個人データの取扱い」の両方を意識して運営する必要があります。
規程・指針・マニュアル全体を確認したい方は、放課後等デイサービスで必要な規程・指針・マニュアル一覧|開業前・運営開始後に整備すべき書類を解説もあわせてご確認ください。
この記事の結論
- 放課後等デイサービスには、指定基準上の秘密保持義務があります。
- 従業者・管理者は、正当な理由なく業務上知り得た児童・家族の秘密を漏らしてはいけません。
- 退職者についても、事業者は秘密を漏らさないよう必要な措置を講じる必要があります。
- 他の福祉サービス事業者等へ情報を提供する場合、指定基準上、あらかじめ文書による同意が求められる場面があります。
- 民間事業者には個人情報保護法への対応も必要です。
- 障害・病歴・診療情報等は「要配慮個人情報」に該当し得ます。
- 同意書を取れば、どんな情報でも自由に共有できるわけではありません。
- 写真・動画・ホームページ・SNS掲載は、通常の支援目的の情報利用と分けて考えることが重要です。
- LINE、メール、個人スマホ、クラウド、送迎表など、日常業務の中にも漏えいリスクがあります。
- 漏えい等が発生した場合、個人情報保護委員会への報告・本人通知と、宮城県・仙台市等の指定権者への事故報告は別制度として確認します。
- 規程や同意書を作るだけでなく、職員周知・アクセス管理・退職時対応・漏えい時の初動まで実際に運用できる状態にしておくことが重要です。
放課後等デイサービスの個人情報保護・秘密保持とは?
放課後等デイサービスにおける個人情報保護・秘密保持とは、簡単にいえば支援のために知り得た利用児童や家族の氏名、住所、障害、健康状態、家庭状況、学校、支援内容等の情報を、適切に取得・利用・保管・共有し、不必要に第三者へ漏らさないための仕組みのことです。
ここで重要なのは、「漏らさない」ことだけがゴールではない点です。事業所は、利用目的を明確にし、必要な情報を適正に取得し、安全に保管し、必要な相手に必要な範囲で共有し、保存期間を終えた情報は適切に廃棄するという、情報のライフサイクル全体を管理する必要があります。
個人情報保護と秘密保持の違い
個人情報保護と秘密保持は重なる部分がありますが、同じ制度ではありません。
| 項目 | 個人情報保護 | 秘密保持 |
|---|---|---|
| 主な根拠 | 個人情報保護法等 | 指定通所支援基準等 |
| 主な対象 | 個人情報の取得・利用・保存・安全管理・第三者提供等 | 業務上知り得た児童・家族の秘密 |
| 職員への対応 | 従業者監督、安全管理措置等 | 正当な理由なく秘密を漏らさない |
| 退職者への対応 | 情報やアカウントの管理等 | 退職後も秘密を漏らさないための必要な措置 |
| 情報提供 | 個人情報保護法上の第三者提供ルール等 | 指定基準上、他事業者等への情報提供時に文書同意が求められる |
実務では両方を一体的に管理しますが、法的な根拠を混同しないことが大切です。
指定基準上の秘密保持とは?
「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」第47条では、児童発達支援について秘密保持等が定められています。放課後等デイサービスについては、同基準第71条により第47条が準用されています。
主な内容は次の3点です。
- 従業者・管理者は、正当な理由なく、業務上知り得た障害児またはその家族の秘密を漏らしてはならない。
- 事業者は、従業者・管理者であった者が退職後等に秘密を漏らさないよう、必要な措置を講じなければならない。
- 他の指定障害児入所施設、指定障害福祉サービス事業者その他の福祉サービス提供者等へ児童・家族の情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該児童または家族の同意を得ておかなければならない。
国の解釈通知では、退職後の秘密保持について、雇用時等に秘密保持を取り決めるなどの措置を講じる趣旨が示されています。また、国の指導監査に関する確認文書では、秘密保持の確認資料として「秘密保持誓約書」や就業規則等、情報提供の同意確認として「個人情報同意書」が例示されています。
放課後等デイサービスの指定基準全体については、放課後デイサービス指定条件は?もご参照ください。
個人情報保護法も適用される?
はい。民間法人等が運営する放課後等デイサービスは、個人情報を事業のために取り扱う事業者として、個人情報保護法に基づく対応が必要です。
事業所運営で特に関係するのは、次のような項目です。
- 利用目的をできる限り特定する
- 利用目的を本人に通知・公表する
- 個人情報を適正に取得する
- 個人データについて必要かつ適切な安全管理措置を講じる
- 従業者を必要かつ適切に監督する
- 個人データを委託する場合、委託先を必要かつ適切に監督する
- 第三者提供のルールを守る
- 保有個人データの開示等請求へ対応できる体制を整える
- 一定の漏えい等では個人情報保護委員会への報告・本人通知を行う
個人情報保護法をすべて暗記する必要はありませんが、少なくとも「何のために取得するか」「誰と共有するか」「どこに保存するか」「誰がアクセスできるか」「漏れたときにどうするか」は、開業前に決めておきましょう。
放課後等デイサービスで扱う個人情報
放課後等デイサービスでは、たとえば次のような情報を扱います。
氏名、生年月日、住所、電話番号、学校名、学年、下校時間
保護者氏名、家族構成、緊急連絡先、家庭環境、相談内容
受給者証の内容、障害や診断、健康状態、病歴、服薬、アレルギー、医療的ケア
個別支援計画、アセスメント、モニタリング、支援記録、事故・苦情・虐待等に関する記録
写真、動画、音声、送迎先、送迎時刻、位置情報
紙の書類だけでなく、スマートフォン内の写真、LINEのメッセージ、クラウド上のファイル、メール添付、送迎アプリなども情報管理の対象になります。
要配慮個人情報とは?
個人情報保護法では、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないよう特に配慮を要する情報を「要配慮個人情報」としています。放課後等デイサービスでは、特に次の情報が該当し得ます。
- 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害等の事実
- 病歴
- 診療や投薬等に関する情報
- 健康診断その他医療・健康に関する一定の情報
要配慮個人情報の取得は、法令上の例外を除き、原則として本人の同意が必要です。また、要配慮個人情報を含む個人データの漏えい等は、個人情報保護委員会への報告・本人通知の対象となり得るため、放課後等デイサービスでは特に慎重な管理が必要です。
児童は未成年者であるため、本人が有効な同意を判断できる年齢・能力かも考慮します。実務上は契約者・通所給付決定保護者等への説明と同意を中心に進めますが、児童本人の理解力に応じて分かりやすく説明し、意思を尊重する視点も重要です。
個人情報保護規程は必ず必要?
「個人情報保護規程」という名称の独立した文書を全国一律に必ず作らなければならない、と単純にはいえません。重要なのは、個人情報保護法上求められる安全管理措置や従業者監督等を、事業所として実施できる体制を作ることです。
実務では、次のような文書を整備しておくと管理しやすくなります。
- 個人情報保護方針
- 個人情報取扱規程
- 秘密保持規程
- 情報管理マニュアル
- 個人情報漏えい対応フロー
- 個人端末・クラウド利用ルール
つまり、規程の名称より、必要な管理内容が決められ、職員がそのルールに従って運用していることが重要です。
個人情報保護規程・マニュアルには何を書く?
実務上は、少なくとも次の事項を整理しておくとよいでしょう。
基本方針
法令・ガイドラインの遵守、個人情報の利用目的、適正な取得、安全管理の基本方針を定めます。
管理体制
個人情報管理責任者、職員の役割、アクセス権限、インシデント報告ルートを明確にします。
紙書類
保管場所、持ち出しの可否、コピー時の管理、廃棄方法を決めます。
電子データ
ID・パスワード、多要素認証、アクセス制限、USB等外部媒体、クラウド、メール、バックアップ、端末紛失時の対応を整理します。
第三者提供・情報共有
同意の確認、提供先、提供情報、提供目的、記録方法を定めます。
写真・動画
撮影目的、保管方法、保護者への共有、ホームページ・SNS掲載、同意撤回時の対応を決めます。
漏えい等
初動、管理者への報告、被害拡大防止、事実確認、個人情報保護委員会への報告要否確認、本人通知、指定権者等への事故報告、再発防止の流れを整えます。
これらすべてが「規程の法定記載事項」として全国一律に定められているわけではありません。法令上の義務と、事業所が安全管理のために決める具体的ルールを分けて考えましょう。
職員の秘密保持義務
秘密保持は、管理者や児童発達支援管理責任者だけの問題ではありません。児童指導員、保育士、看護職員、送迎担当者、事務職員など、業務上児童・家族の情報を知り得る職員全体が意識する必要があります。人員体制の全体像は放課後等デイサービスの人員基準もあわせてご確認ください。
特に注意したいのは、次のような場面です。
- 休憩室で他児童や家族の事情を話す
- 通勤中や飲食店でケースについて話す
- 家族に「今日こんな子がいて」と話す
- 個人SNSへ支援内容を投稿する
- 職員個人のLINEへ児童情報を送る
- 私物スマホで撮った写真を削除し忘れる
事業所内での情報共有も、必要な職員に必要な範囲で行うことが基本です。
秘密保持誓約書は必要?
指定基準は、退職後の秘密保持のため「必要な措置」を講じることを求めています。国の解釈通知では、従業者等でなくなった後も秘密を保持すべき旨を、雇用時等に取り決めるなどの措置が示されています。
そのため実務では、雇用契約書、就業規則、秘密保持誓約書、入職時の説明、退職時の再確認等を組み合わせることが考えられます。
国の運営指導の確認文書では秘密保持誓約書が確認文書として例示されていますが、重要なのは「秘密保持誓約書」という名称だけではなく、在職中・退職後の秘密保持を実効的に担保できる措置があることです。
退職した職員にも秘密保持は必要?
必要です。指定基準では、事業者に対し、従業者・管理者であった者が業務上知り得た児童・家族の秘密を正当な理由なく漏らさないよう必要な措置を講じることを求めています。退職者のアカウントが数か月残り続ける、といった状態は避ける必要があります。
個人情報使用同意書とは?
個人情報使用同意書は、支援を行うために必要な範囲で、相談支援事業所、他の障害福祉サービス事業者、学校、医療機関等と情報を共有するときに、利用目的や提供先等を説明し、必要な同意を確認するための文書として使われます。
ただし、個人情報に関するすべての処理について「同意書が唯一の適法根拠」と考えるのは適切ではありません。個人情報保護法には、法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護のため本人の同意取得が困難な場合など、本人同意なく第三者提供できる例外もあります。また、指定基準上の文書同意と、個人情報保護法上の第三者提供同意は、根拠が異なります。
他事業者へ情報提供するとき同意は必要?
指定基準第47条第3項が放課後等デイサービスへ準用され、他の福祉サービス提供者等へ児童・家族の情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該児童または家族の同意を得ておくこととされています。
国の解釈通知では、サービス提供開始時に支給決定保護者等から包括的な同意を得ておくことでも足りる旨が示されています。ただし、包括同意があるからといって、無制限に情報共有できるわけではありません。「何のために共有するのか」「誰に共有するのか」「どの情報が必要なのか」「その共有が支援に必要か」を個別に確認しましょう。
学校との情報共有
放課後等デイサービスでは、学校との連携が必要になる場面が多くあります。下校時間、送迎場所、当日の体調、行動面の変化、支援上の配慮、緊急時の連絡、学校での様子と事業所での様子の共有などです。
しかし、「学校だから自由に情報を伝えてよい」わけではありません。契約時の同意内容、利用目的、情報共有の必要性を確認し、支援に必要な範囲で共有します。特に家庭内の事情、診断歴、医療情報など、学校との連携目的に必要のない情報まで一括して伝えないよう注意しましょう。
相談支援事業所との情報共有
相談支援事業所とは、サービス等利用計画、障害児支援利用計画、モニタリング、サービス担当者会議等を通じて情報共有する機会があります。
必要な連携は行いつつ、共有目的を明確にする、必要な情報に絞る、同意範囲を確認する、会議資料の保管・廃棄を決める、オンライン会議では参加者・画面共有・録画の扱いを確認する、といった点を意識します。「担当者会議だから何でも話してよい」ではなく、支援上必要な情報を適切に共有することが基本です。
医療機関との情報共有
てんかん、アレルギー、服薬、医療的ケア等がある児童では、医療機関との連携が必要になることがあります。通常時は、本人・保護者への説明、同意、共有目的と範囲を確認して情報共有します。
一方、急病や事故等で生命・身体を守るため緊急に医療機関へ情報を伝える必要があり、本人の同意を得ることが困難な場合、個人情報保護法上の第三者提供の例外に該当し得ます。「守秘義務があるから救急隊や医療機関へ何も伝えられない」と考えるのは誤りです。
サービス担当者会議での情報共有
サービス担当者会議では複数の関係者が参加するため、情報共有の範囲を意識する必要があります。会議参加者、会議の目的、共有する個人情報、同意の範囲、会議資料の配布部数、終了後の回収・廃棄、オンライン参加者の本人確認、録画・録音の扱いを確認しましょう。
会議資料をメール送付する場合も、宛先間違い、CC・BCC、添付ファイル間違いに注意が必要です。
同意書があれば何でも共有できる?
できません。包括的な同意書がある場合でも、利用目的、提供先、情報の内容、必要性、本人・家族への影響を考えて共有します。「同意書を1枚取ったので、SNS掲載も学校への提供も医療情報共有も全部自由」といった運用は避けるべきです。
写真・動画を撮影してよい?
放課後等デイサービスでは、支援記録、保護者への活動報告、事業所内掲示、ホームページ、SNS、パンフレット、採用広報など、さまざまな目的で写真・動画を使用することがあります。
同じ写真でも、利用目的によって必要な説明・同意の考え方が変わります。特に外部公開を伴うホームページ・SNS・広告は、通常の支援記録とは目的が異なります。
ホームページ・SNSへの写真掲載
ホームページやSNSへ児童の写真を掲載するときは、顔だけでなく、次の情報にも注意が必要です。
外部向け広報に使用する場合は、支援のための一般的な個人情報使用同意とは分け、掲載媒体や目的を具体化した同意を取る運用が安全です。同意しない児童・保護者に不利益が生じないよう配慮することも重要です。
LINE・メールで保護者と連絡してよい?
LINEやメールを使用すること自体が全国一律に禁止されているわけではありません。問題は、事業所として安全管理のルールがあるかです。
注意したい例としては、グループLINEで他の保護者のアカウントが見える、別の保護者へ写真を誤送信する、個人アカウントで職員と保護者がつながる、退職後も職員個人アカウントに連絡先が残る、医療情報・家庭情報を不用意に送る、端末のロックや紛失対策がない、といったケースが挙げられます。
事業所公式アカウントや業務用端末を使用する、送信前確認ルールを定めるなど、組織的に管理しましょう。
職員個人のスマホで児童情報を扱ってよい?
個人スマホの使用が法令上全国一律に禁止されているとは限りません。ただし、個人情報保護法上の安全管理措置を考えると、何のルールもなく職員個人端末へ児童情報を保存する運用はリスクが高いといえます。
特に、カメラで撮影した写真、スクリーンショット、電話帳、LINE、メール、自動クラウドバックアップ、家族と共有している写真アプリ等から、事業所の管理外へ情報が残る可能性があります。BYODを認める場合は、利用可能な業務、保存禁止情報、端末ロック、遠隔消去、退職時削除確認等をルール化しましょう。
送迎名簿・送迎表の管理
送迎表には、児童氏名、学校名、自宅・送迎先、連絡先、送迎時刻等が記載されることがあります。日常的に使うため管理が甘くなりやすい一方、紛失すると児童の生活圏まで分かってしまう可能性があります。
ダッシュボード上に置きっぱなしにしない、車外から見える場所へ放置しない、使用後に回収する、紛失時の連絡ルートを決める、不要になった紙は適切に廃棄する、といった運用が重要です。
紙書類の保管
放課後等デイサービスでは、受給者証の写し、契約書、個別支援計画、支援記録、健康情報、事故記録、苦情記録、同意書等、多くの紙書類を保管します。
「鍵付きキャビネット」という特定の方法がすべての事業所に全国一律で法定されている、という整理ではなく、取り扱う情報の性質や事業所の状況に応じた安全管理措置を講じることが重要です。誰でも自由に閲覧できる棚へ個人ファイルを置く、来客スペースから見える場所へ書類を置く、といった状態は避けましょう。
電子データ・クラウドの管理
電子化している事業所では、職員ごとにIDを発行する、共有アカウントを減らす、強固なパスワードを設定する、多要素認証を利用する、職種ごとにアクセス権限を分ける、USB利用を制限・記録する、パソコン持ち出しルールを決める、バックアップを取得する、退職者アカウントを速やかに停止する、といった対策を検討します。
これらの具体策すべてが一律の法定義務という意味ではありません。個人情報保護法の安全管理措置を実効的に行うための具体例として、事業所の規模・システム・リスクに応じて選択します。
個人情報を含む書類・データの廃棄
保存期間が終わった個人情報を廃棄するときは、復元・閲覧されにくい方法を選びます。シュレッダー、溶解処理、専門業者による機密廃棄、電子データの削除、記録媒体の適切な廃棄などが例として挙げられます。
ただし、指定基準や自治体ルール等で保存期間が定められている記録については、保存期間前に廃棄しないよう注意してください。
委託先へ個人情報を渡す場合
給食、送迎、システム、クラウド、廃棄、請求業務等を外部へ委託する場合があります。個人情報保護法では、利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを委託することに伴う提供は、一定の場合、第三者提供に当たらないとされています。
ただし、委託だから管理しなくてよいわけではありません。事業者には委託先に対する必要かつ適切な監督が求められます。委託先の安全管理体制、契約上の秘密保持、再委託、漏えい時の報告、契約終了後のデータ削除・返却等を確認しましょう。
個人情報が漏えいした場合の対応
個人情報漏えい等として想定される例としては、メールの誤送信、他児童の書類の誤交付、送迎表やUSBの紛失、パソコン・スマホの盗難、SNSへの誤掲載、クラウドへの不正アクセス、退職者による情報持ち出しなどがあります。
発生時は、次の流れを基本に対応します。
- 被害拡大を防ぐ
- 管理者・責任者へ直ちに報告する
- 事実関係を確認する
- 漏えいした情報と対象者を特定する
- 個人情報保護委員会への報告要否を確認する
- 本人への通知要否を確認する
- 宮城県・仙台市等への事故報告要否を確認する
- 原因を分析する
- 再発防止策を実施する
漏えいを隠す、担当職員だけで処理する、といった対応は避けましょう。放課後等デイサービスの事故・緊急時対応とは?マニュアル・報告・記録を解説もあわせてご参照ください。
個人情報保護委員会への報告は必要?
すべての軽微なミスが一律に個人情報保護委員会への報告対象になるわけではありません。個人情報保護法上、個人の権利利益を害するおそれがある一定の漏えい等について、報告・本人通知が義務付けられています。
主な報告対象類型は、①要配慮個人情報を含む個人データの漏えい等、②財産的被害が生じるおそれがある漏えい等、③不正目的による漏えい等、④1,000人を超える漏えい等、の4つです。放課後等デイサービスでは障害・病歴・健康情報等の要配慮個人情報を扱うため、少人数の事案でも報告対象となる可能性があります。
個人情報保護委員会は、報告対象事態について、速報は発覚後速やかに(概ね3~5日以内)、確報は原則30日以内、不正目的のおそれがある場合は60日以内と案内しています。本人通知も、対象事態の状況に応じて速やかに行う必要があります。
宮城県・仙台市への事故報告も必要?
個人情報保護委員会への報告と、障害児通所支援事業者として指定権者等へ行う事故報告は別制度です。
宮城県は、仙台市を除く県内の指定障害児通所支援事業者等を含む事故報告の取扱指針・様式を公表しています。個人情報漏えい等が自治体の事故報告対象に該当するかは、最新の事故報告取扱いを確認して判断します。仙台市内の事業所は仙台市の事故報告ルールに従います。
したがって、漏えい時には、個人情報保護法上の報告、本人通知、指定権者等への事故報告を別々に確認することが重要です。
個人情報漏えいと苦情対応
「他の家庭に子どもの障害について話された」「写真を無断でSNSに掲載された」「別児童の書類が渡された」といった申出は、苦情対応だけでなく、個人情報漏えい等としての調査が必要になる場合があります。苦情受付、事実確認、本人への説明、漏えい報告、再発防止を並行して進めることがあります。
苦情対応の基本は、放課後等デイサービスの苦情対応とは?受付体制・記録・対応方法を解説で詳しく解説しています。
虐待・事故対応と個人情報
個人情報保護・秘密保持は重要ですが、生命・身体の保護や法令上の通報・報告を妨げるものではありません。虐待が疑われる、重大事故が起きた、救急搬送が必要、警察への通報が必要、といった場面では、法令に基づく情報提供や、人の生命・身体の保護のための個人情報保護法上の例外が問題になります。
「秘密保持だから外部に何も話せない」と判断せず、法令・通報義務・緊急性に沿って対応します。虐待防止については、放課後等デイサービスの虐待防止措置とは?委員会・指針・研修について解説もあわせてご参照ください。
プライバシーポリシーは必要?
個人情報保護法では、利用目的の通知・公表等が求められます。そのため、ホームページ等で個人情報保護方針、プライバシーポリシー、個人情報の利用目的を掲載する方法は実務上有効です。
ただし、「ホームページにプライバシーポリシーを掲載していなければ必ず違法」と単純化するのは適切ではありません。大切なのは、法令上必要な利用目的の通知・公表等を、事業所の運用に合った方法で適切に行うことです。
個人情報の利用目的には何を書く?
放課後等デイサービスでは、たとえば障害児通所支援の提供、個別支援計画の作成・評価、保護者への連絡、相談支援事業所との連携、学校との連携、医療機関との連携、障害児通所給付費等の請求、行政への申請・届出・報告、事故・緊急時対応、苦情対応といった利用目的が考えられます。
一方、ホームページ掲載、SNS掲載、広告、採用広報は通常の支援提供とは目的が異なります。外部広報利用は、支援目的の利用と分けて説明・同意を取る運用が分かりやすいでしょう。
個人情報同意書には何を書く?
実務上、個人情報使用同意書では、利用目的、使用・共有する情報、提供先、利用・提供する期間、学校・相談支援・医療機関等との情報共有、写真・動画の扱い、同意の変更・撤回、問い合わせ窓口といった事項を検討します。
ただし、これらすべてを「法定必須記載事項」と一律に説明するものではありません。指定基準上必要な文書同意、個人情報保護法上の第三者提供・要配慮個人情報の取扱い、事業所独自の広報利用同意などを分けて設計することが重要です。
同意はいつ取る?
| 時期 | 主な対応 |
|---|---|
| 契約時・利用開始前 | 利用目的、関係機関連携等を説明し必要な同意を取得 |
| 新しい利用目的を追加するとき | 既存の説明・同意範囲を確認 |
| 写真・SNS利用を始めるとき | 支援目的と分けて具体的に説明 |
| 提供先が大きく変わるとき | 既存の同意範囲で対応できるか確認 |
| 同意内容を変更するとき | 本人・保護者へ再説明 |
包括同意だけに頼らず、利用目的が大きく変わるときは改めて説明しましょう。
同意を撤回された場合
写真・SNS利用等について保護者が同意を撤回した場合は、撤回後の新たな利用・掲載を停止するなど、対象となる利用目的に応じた対応を検討します。すべての過去データについて必ず遡って削除しなければならない、と一律にはいえません。掲載先、契約内容、利用目的、技術的な削除可能性等を確認し、本人・保護者へ分かりやすく説明することが重要です。
個人情報保護・秘密保持の職員研修
個人情報保護法では従業者への必要かつ適切な監督が求められます。指定基準上も秘密保持を守る必要があるため、職員への教育・周知は重要です。実務上は、入職時、定期的な職員研修、新システム導入時、情報事故発生後、ルール改定時等に研修を行うとよいでしょう。
個人情報保護・秘密保持研修について、放課後等デイサービス全国共通で「必ず年○回」という固定頻度を単純に示す制度ではありません。事業所のリスクに応じて、定期的かつ実効性ある教育を行うことが重要です。
職員退職時に確認すること
退職時の情報管理は、秘密保持だけではありません。退職日当日に確認できるチェックリストを作っておくと、漏れを防ぎやすくなります。
- 秘密保持義務の再確認
- 紙資料の返却
- USB・外部媒体の返却
- 貸与スマートフォン・PCの返却
- 個人端末内の業務データ削除確認
- クラウドアカウント停止
- メールアカウント停止
- チャット・LINE等の業務グループから削除
- 鍵・カードキーの返却
個人情報保護に減算はある?
2026年8月時点で、放課後等デイサービスについて、「個人情報保護規程未整備減算」「秘密保持誓約書未取得減算」「個人情報同意書未取得減算」という名称の独立した報酬減算を、一般的な報酬制度上の独立項目として扱うものではありません。
ただし、減算がないから守らなくてよいわけではありません。秘密保持は指定基準上の義務であり、個人情報保護法違反は別途法令上の問題となります。重大な基準違反は行政指導・監査等につながる可能性があります。報酬減算と法令・指定基準違反は区別して考えましょう。
運営指導では何を確認される?
国の2025年3月改正版の指定障害児通所支援事業者等の指導監査資料では、放課後等デイサービスの秘密保持等について、主に次の点が確認項目として示されています。
- 従業者・管理者が秘密を漏らしていないか
- 退職者等が秘密を漏らさないための必要な措置を講じているか
- 他の福祉サービス提供者等へ情報提供する際、あらかじめ文書同意を得ているか
確認文書として、秘密保持誓約書、就業規則等、個人情報同意書等が示されています。したがって、単に書類を作成するだけでなく、雇用時・契約時に実際に説明・取得し、最新の状態で保存していることが重要です。
法令上の必須事項と実務上の推奨事項を分ける
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 指定基準上必要 | 従業者等の秘密保持、退職後の秘密保持措置、他事業者等への情報提供時の文書同意 |
| 個人情報保護法上必要 | 利用目的、安全管理措置、従業者監督、委託先監督、第三者提供、一定の漏えい等報告・本人通知等 |
| 宮城県・仙台市の指定・運営実務 | 指定申請書類、運営指導確認、事故報告等を最新様式で確認 |
| 実務上追加すると望ましい | 個人情報保護規程、情報管理マニュアル、写真・SNS同意書、持出管理、アクセス権限表、漏えい対応フロー、退職時チェックリスト等 |
「書類の名前があるか」だけでなく、法令上求められる状態を実現できているかを確認しましょう。全体の運営基準については放課後デイサービスの運営基準もあわせてご覧ください。
開業前にはどこまで整備すればよい?
| 時期 | 整備・実施すること |
|---|---|
| 指定申請前 | 秘密保持、個人情報使用同意、重要事項説明書等を確認 |
| 開業前 | 個人情報保護方針・規程・情報管理マニュアル等を整備 |
| 採用時 | 秘密保持・情報管理を説明し、必要な措置を講じる |
| 契約時 | 利用目的、情報共有、必要な同意を説明・取得 |
| 開業後 | 紙・電子データを安全に管理 |
| 関係機関連携時 | 同意、目的、提供範囲を確認 |
| 写真・SNS利用時 | 支援目的と分けて同意を確認 |
| 漏えい等発生時 | 初動、報告、本人通知の要否を確認 |
| 退職時 | アカウント、資料、端末、秘密保持等を確認 |
指定申請全体の流れは、放課後デイサービス指定申請流れを徹底解説も参考にしてください。開業後の届出・運営については放課後デイサービス 開業後の届出・運営もあわせてご確認ください。
宮城県・仙台市で開業する場合の確認ポイント
仙台市内
仙台市では、障害福祉サービス・障害児通所支援等の新規指定申請について、ココロンマニュアルとサービス別の申請様式を公表しています。児童発達支援・放課後等デイサービスについても、新規指定申請用の様式一式が案内されています。
申請準備では、全国共通の指定基準だけでなく、最新のココロンマニュアル、放課後等デイサービスの指定申請様式、重要事項説明書等の内容、秘密保持・個人情報同意の整備状況、運営指導で確認される資料、事故報告ルールを確認してください。
仙台市を除く宮城県内
宮城県内の仙台市以外の事業所では、宮城県の障害児通所支援に関する指定申請資料や運営指導資料を確認します。また、宮城県は指定障害児通所支援事業者等を対象にした事故等発生時の市町村等報告の取扱指針を公表しています。個人情報漏えいが起きた場合は、個人情報保護委員会への報告だけで終わらせず、宮城県の事故報告対象となるかも確認しましょう。
宮城県と仙台市で明確な違いが確認できない部分について、無理に地域差を作る必要はありません。所在地に応じて最新様式・提出先・事故報告手順を確認することが実務上重要です。
放課後等デイサービス個人情報保護でよくある間違い
1.同意書を取れば何でも共有できると思っている
同意の目的・提供先・情報範囲を確認する必要があります。
2.秘密保持を口頭説明だけで済ませている
退職後を含む必要な措置を、雇用契約、就業規則、誓約書等で明確にしましょう。
3.SNS掲載と支援目的の写真利用を同じ扱いにする
外部広報は支援目的と分けて具体的に説明する方が安全です。
4.職員個人スマホに児童写真が残っている
自動バックアップや私用アプリへの保存にも注意が必要です。
5.グループLINEで他保護者の情報が見える
保護者同士の連絡先・アカウントも個人情報になり得ます。
6.送迎表を車内へ置きっぱなしにする
氏名・学校・住所等が一度に漏れるおそれがあります。
7.退職者のクラウドアカウントが残っている
退職日を基準にアカウント停止手順を決めておきましょう。
8.漏えいを事業所内だけで処理する
個人情報保護委員会、本人、指定権者等への報告・通知要否をそれぞれ確認します。
開業・運営チェックリスト
- 個人情報の利用目的を整理した
- 利用目的の通知・公表方法を決めた
- 秘密保持に関する職員ルールを定めた
- 退職後の秘密保持措置を決めた
- 個人情報使用同意書を整備した
- 学校・相談支援・医療機関との情報共有範囲を整理した
- 写真・動画・SNS利用の同意方法を決めた
- LINE・メールの利用ルールを定めた
- 個人スマホ利用の可否・条件を決めた
- 送迎表の保管・回収方法を決めた
- 紙書類の保管場所と持出ルールを決めた
- 電子データのアクセス権限を設定した
- 退職時のアカウント停止手順を決めた
- 委託先の個人情報管理を確認する仕組みを作った
- 個人情報漏えい時の初動フローを作った
- 個人情報保護委員会への報告基準を確認した
- 宮城県・仙台市の事故報告ルールを確認した
- 職員へ個人情報保護・秘密保持を周知した
よしだ行政書士事務所が個人情報保護・秘密保持関係書類の整備を支援します
- 放課後等デイサービスの指定申請・運営規程の作成支援
- 個人情報使用同意書・秘密保持誓約書等のひな形整備支援
- 個人情報保護規程・情報管理マニュアルの整備相談
- 漏えい発生時の初動対応・報告フローの整理相談
宮城県名取市を拠点に、宮城県全域を中心に東北6県からのご相談に対応しています。オンライン相談、訪問相談、土日祝日の予約相談も可能です。
まとめ
放課後等デイサービスでは、障害、健康状態、家庭環境、学校生活、支援記録など、非常に重要な情報を日常的に扱います。そのため、個人情報を守ることと支援のため必要な情報を適切に共有することの両方が必要です。
開業前に整えておきたい10のステップ
- 利用目的を明確にする
- 必要な個人情報を適正に取得する
- 必要な同意を取得する
- 職員へ秘密保持・情報管理を周知する
- 紙・電子データを安全に管理する
- 関係機関とは必要な範囲で情報共有する
- 写真・SNS等は目的を分けて管理する
- 漏えい時の対応フローを決める
- 必要な行政報告・本人通知を行う
- 原因分析と再発防止につなげる
また、個人情報保護規程、秘密保持誓約書、個人情報使用同意書等は、ひな形を置くだけでは十分ではありません。事業所の実際の連絡方法、クラウド、送迎、写真撮影、職員端末、退職時対応まで反映し、職員が同じルールで運用できる状態にすることが大切です。
よしだ行政書士事務所では、宮城県・仙台市で放課後等デイサービスの開業を検討している事業者向けに、指定申請だけでなく、運営規程、重要事項説明書、個人情報使用同意書、秘密保持関係書類など、開業時に必要となる書類全体の整理についてご相談いただけます。
運営規程については、放課後等デイサービスの運営規程とは?記載事項・作成方法・注意点を解説もあわせてご確認ください。
よくある質問
- 指定基準
- 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準を指します。
- 個人情報保護法
- 個人情報の保護に関する法律を指します。
- その他
- 本記事では、法令上の義務と実務上の推奨事項を区別して記載しています。自治体の申請様式・事故報告・運営指導の運用は変更されることがあります。
参考資料
- 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省/e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100015
確認内容:第47条「秘密保持等」、第71条による放課後等デイサービスへの準用/最終確認日:2026年8月26日 - 指定障害児通所支援事業者等の指導監査について(こども家庭庁・厚生労働省/令和7年3月31日改正)
https://www.mhlw.go.jp/content/001477137.pdf
確認内容:放課後等デイサービスの秘密保持等に関する着眼点、秘密保持誓約書・就業規則等・個人情報同意書の確認/最終確認日:2026年8月26日 - 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
確認内容:利用目的、安全管理措置、従業者監督、委託先監督、第三者提供、要配慮個人情報、漏えい等/最終確認日:2026年8月26日 - 漏えい等の対応とお役立ち資料(個人情報保護委員会)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/
確認内容:漏えい等報告の対象、速報・確報、本人通知/最終確認日:2026年8月26日 - 障害福祉サービス事業者等の新規指定申請について(仙台市)
https://www.city.sendai.jp/shogaishien-shido/jigyosha/fukushi/fukushi/shogai/jigyosho/shinki.html
確認内容:ココロンマニュアル、新規指定申請手続、児童発達支援・放課後等デイサービスの申請様式/最終確認日:2026年8月26日 - 指定障害福祉サービス等事業者等各種届出に関する手引き(ココロンマニュアル)(仙台市/令和7年10月発行)
https://www.city.sendai.jp/shogaishien-shido/jigyosha/fukushi/fukushi/shogai/jigyosho/documents/r710matome.pdf
確認内容:指定・変更・業務管理体制等の仙台市実務/最終確認日:2026年8月26日 - 障害福祉サービス事業者等における事故発生時の市町村等への報告について(宮城県)
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/syoufuku/sityousontouhoukoku.html
確認内容:仙台市を除く宮城県内の指定障害児通所支援事業者等を含む事故報告の取扱い/最終確認日:2026年8月26日
情報確認日:2026年8月26日