重症心身障害児を対象とする児童発達支援を開業するには|人員・設備・定員・報酬を解説
重症心身障害児を主として受け入れる児童発達支援は、一般の児発と比べ、対象児、最低定員、人員、設備、基本報酬の取扱いが異なります。実務上「重心型児発」と呼ばれますが、独立した法定サービス名ではありません。定員5名から検討できる場合がある一方、5名に設定すれば自動的に重心型として指定されるわけでもありません。対象となる児童像、職員の採用可能性、医療・安全体制を先に組み立て、指定権者と協議してから物件を確定することが大切です。
先に結論
- 「主として重症心身障害児を通わせる」事業所としての対象児と運営方針を明確にします。
- 一般型で医療的ケア児を受け入れる場合とは、適用される定員・人員・報酬が異なります。
- 一定の条件で定員5名以上から検討できますが、対象児の確保と指定権者の確認が必要です。
- 嘱託医、看護職員、児童指導員・保育士、機能訓練担当職員、児発管等の配置を確認します。
- 最低配置だけでなく、医療的ケア、休憩、欠勤、送迎を含む実際の勤務体制が必要です。
重症心身障害児を対象とする児発とは
重症心身障害児は、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複する児童として制度上扱われます。医療的ケアの有無や医療的ケア判定スコアだけで該当性が決まるものではありません。事業者が外見や診断名のみで決めず、受給者証、自治体の確認、関係資料を通じて判断します。
「医療的ケア児」は恒常的に医療的ケアが不可欠な児童という別の概念です。両方に該当する児童も、一方だけに該当する児童もいます。詳しくは医療的ケア児と重症心身障害児の違いをご覧ください。
「主として通わせる」とは
事業所の主たる対象を重症心身障害児とし、その対象に応じた人員・設備・支援体制で運営する形です。単発で重症心身障害児を受け入れることや、看護職員がいることだけでこの取扱いになるわけではありません。指定申請では、対象児、利用見込み、運営規程、職員配置等を一体で確認します。
一般型・医療的ケア児対応との違い
| 類型 | 判断の中心 | 開業への影響 |
|---|---|---|
| 一般の児発 | 主として就学前の障害児への発達支援 | 一般の最低定員・人員・報酬 |
| 一般型で医療的ケア児を受入れ | 医療的ケアの必要性と判定スコア | 看護職員配置、医療的ケア区分の報酬 |
| 重症心身障害児を主として受入れ | 重度知的障害と重度肢体不自由の重複、主対象 | 定員特例、重心児向け人員・基本報酬 |
開業構想の段階で類型を曖昧にすると、採用する職種、平面図、収支が後から大きく変わります。対象児の候補がまだいない場合は、相談支援事業所、医療機関、地域の支援機関等から需要を把握し、指定権者へ事業構想を説明しましょう。一般の児発開業の基礎知識は児童発達支援を開業するには?もあわせてご覧ください。
定員5名から開業できるか
主として重症心身障害児を通わせる児童発達支援は、一般の児発とは異なり、最低定員を5名以上として検討できます。ただし、これは定員の特例です。定員5名を選べば対象児要件や人員基準が免除されるという意味ではありません。
次の点を事前相談で確認します。
- 主たる対象を重症心身障害児とする根拠と利用見込み
- 単独型か、放デイとの多機能型か
- サービスごとの定員と同時利用の考え方
- 各職種の勤務時間と兼務
- 1日5名が利用しない場合の収支と人員維持
定員、契約者数、1日の利用人数、月間延べ利用人数は別の数字です。定員5名でも登録児が5名だけとは限らず、逆に毎日5名が利用する保証もありません。重心型の定員と基本報酬で詳しく整理しています。
人員配置
主として重症心身障害児を通わせる児発では、一般型とは異なる職種構成を確認します。一般の児発の人員配置基準は児童発達支援の人員配置基準で解説していますが、重心型ではこれに加えて次の職種を確認します。
| 職種 | 主な役割 | 配置・確認事項 |
|---|---|---|
| 管理者 | 事業所運営・職員管理 | 支障のない兼務か、緊急時に管理できるか |
| 児発管 | 個別支援計画、連携、職員への助言 | 資格・研修・実務経験、専任・常勤等の要件 |
| 嘱託医 | 健康管理・必要な助言 | 契約内容、連絡方法、来所・助言体制 |
| 看護職員 | 健康観察、医療的ケア | 受入児のケア、提供時間、欠員対応 |
| 児童指導員・保育士 | 発達・生活支援 | 資格確認、療育と介助の実施体制 |
| 機能訓練担当職員 | 日常生活に必要な機能訓練 | 訓練実施時間、専門性、兼務の可否 |
現行基準では各職種について「1以上」などの規定がありますが、勤務形態、専従・兼務、配置時間には個別条件があります。機能訓練担当職員は機能訓練を行わない時間帯の取扱いもあるため、単に「全職種を常勤1人ずつ」とも「名義だけでよい」とも判断できません。重心型児発・放デイの人員配置基準で職種別に解説しています。
最低基準と安全な実配置は違う
児童5名に対して、吸引、経管栄養、移乗、排泄、姿勢保持、発作対応が同時に重なることがあります。看護職員が休憩中、送迎中、欠勤中でも支援が続くため、基準人数だけで勤務表を作ると現場が回らない場合があります。
開業前に30分刻み程度で業務を並べ、支援者が手薄になる時間を確認します。代替看護職員が確保できない日の受入判断も決めておきましょう。
設備と物件
一般の児発に必要な室・設備は児童発達支援の設備基準で解説していますが、重心型ではこれに加えて重症心身障害児の姿勢、移動、休養、機能訓練、医療的ケアを想定した設備が必要です。
- 車いす・バギーが安全に通れる出入口と廊下
- 送迎車から室内までの段差・雨雪対策
- ベッドやマットを置き、体位変換できる広さ
- 静養しながら状態を観察できる場所
- 移乗、排泄、着替えのプライバシー
- 医療物品の清潔な保管、手洗い、廃棄
- 医療機器の電源、充電、配線、停電対策
- 火災・地震・浸水時に複数児を避難させる方法
指定基準上の必須設備と、児童の状態に応じて必要となる設備を区別してください。特定の吸引器、酸素、発電機を全事業所に一律必須とはいえません。設備基準と実務設備の違いを参考に、受入児から逆算しましょう。
物件契約後に用途変更、消防設備、電力、避難動線の問題が見つかると、定員5名の小規模事業でも大きな負担になります。平面図を指定権者へ示し、建築・消防と協議してから契約します。
基本報酬と収支
主として重症心身障害児を通わせる児発の基本報酬は、一般の医療的ケア区分別報酬とは別の区分です。2026年度の報酬算定構造では、重症心身障害児の場合、定員5人以上7人以下は1日2,131単位、8人以上10人以下は1,347単位、11人以上は850単位が基本部分として示されています。実際の請求では、加算・減算、地域区分、児童の支給決定等を確認します。
| 利用定員 | 基本部分(1日) | 注意 |
|---|---|---|
| 5~7人 | 2,131単位 | 2026年度報酬算定構造の重心児区分 |
| 8~10人 | 1,347単位 | 加算・減算前 |
| 11人以上 | 850単位 | 円換算は地域単価等を反映 |
定員5名は1人当たり単位が高くても、利用枠が少なく、1名の欠席が売上に与える影響が大きいモデルです。嘱託医、看護職員、機能訓練担当職員等の人件費・契約費も必要です。入院・体調不良、採用難、欠員、送迎距離を入れた複数の収支ケースを作りましょう。
医療・地域連携
重症心身障害児の支援では、保護者、主治医、医療機関、相談支援専門員、保育所等、訪問看護、自治体との連携が欠かせません。医療情報は同意を得て必要な範囲で共有し、更新時期を決めます。
受入前には、通常の健康状態、急変の兆候、発作、医療機器、連絡順、搬送先、災害時の電源・避難を児童ごとに確認します。共通マニュアルだけでは足りません。医療的ケア児の安全管理に沿って個別票と訓練を整えましょう。
開業までの手順
- 地域需要と対象児童像を調査する
- 児発単独・多機能型、定員、営業日を決める
- 職員配置案と収支計画を作る
- 宮城県または仙台市へ事前相談する:詳しい指定申請の流れは児童発達支援の指定申請もご参照ください。
- 平面図を基に物件・建築・消防を確認する
- 雇用契約、嘱託医契約、連携体制を整える
- 改修、設備、車両、非常用物品を準備する
- 指定申請・加算届を提出する
- 規程・個別手順・研修・緊急訓練を完成させる
- 利用契約と個別アセスメント後に受入れを始める
宮城県・仙台市の申請
仙台市内は仙台市健康福祉局障害福祉サービス指導課が窓口です。2026年9月版ココロンマニュアルと新規指定ページを確認し、電子申請フォームから事前相談を申し込みます。平面図の添付が案内されています。
仙台市外は、宮城県の障害児通所支援指定申請ページ、令和8年9月版手引、所在地を管轄する窓口を確認します。宮城県は指定希望日の概ね1か月以上前までの提出を案内していますが、重心児向け体制はより早い段階で相談してください。
未就学の重心児に必要な発達支援
重心児発でも、医療的ケアと身体介助だけを提供するのではありません。本人の小さな表情・視線・筋緊張の変化を読み、遊び、感覚、姿勢、コミュニケーション、家族との生活につながる目標を個別支援計画へ置きます。
| 支援領域 | 具体的な検討 | 連携先 |
|---|---|---|
| 健康・生活 | 生活リズム、休息、食事、排泄 | 看護職員、家族、主治医 |
| 運動・感覚 | 姿勢、移乗、感覚遊び | 機能訓練担当職員等 |
| 認知・行動 | 選択、予測、反応の把握 | 児童指導員、保育士 |
| 言語・意思 | 視線・表情・機器等での表出 | 専門職、家族 |
| 人間関係 | 大人・子どもとの共有体験 | 支援チーム、保育所等 |
児童の疲労や医療的ケアの時間を無視して活動量を増やすのではなく、参加しやすい姿勢・環境・時間を調整します。機能訓練も、訓練室内の反復だけではなく、遊びや生活参加とつながる目標にしましょう。
家族支援と移行支援
未就学期は、保護者が長期間ケアを担い、通所開始に不安を抱えている場合があります。家庭の方法を一方的に評価せず、事業所で安全に再現できる部分、医師等に再確認する部分、事業所では対応できない部分を分けます。
保育所等との併行利用、就学相談、学校見学、放デイへの移行では、本人の得意な意思表示、姿勢、ケア、緊急対応を次の機関へつなぎます。個人情報の共有同意を得たうえで、書面と合同会議を組み合わせましょう。
開業前に利用見込みを確認する方法
重心児発の定員5名モデルでは、一人の欠席が稼働率へ大きく影響します。地域の推計だけでなく、相談支援、医療機関、自治体等から適法・適切な方法でニーズを把握し、曜日別、年齢別、送迎地域別に整理しましょう。
利用希望があっても、支給決定、保護者の送迎、他サービスとの併行、体調・入院で開始時期は変わります。「問い合わせ人数=開業月の利用人数」と置かず、基本、慎重、厳しいケースの三通りで収支を作ります。
開業前面談で確認する項目
- 現在の通所・訪問・医療・保育の利用状況
- 希望曜日・時間と、家庭からの送迎可能性
- 医療的ケア、発作、姿勢、移乗、意思表示
- 受給者証等の状況と相談支援事業所
- 主治医・医療機関、緊急搬送に関する情報
- 保護者が期待する発達支援・家族支援
- 就学までの期間と移行に関する希望
開業直前の模擬運営
開業前に、児童が同時に到着する場面、ケアと食事が重なる場面、看護職員が休憩する場面、送迎車が出る場面を、実際の職員・部屋・物品で再現します。車いす寸法や機器を模した荷物を使うと、図面では分からない狭さや死角が見つかります。
発作・機器アラーム・停電・火災も訓練します。主治医の個別指示が必要な処置を一般化せず、誰が判断し、誰が119番・家族へ連絡し、他児を誰が見るかを確認します。結果は勤務表、物品配置、緊急対応票へ戻しましょう。
児童別の一日計画を作る
重心児発の一日は、事業所共通の日課だけでなく、児童ごとのケア・姿勢・休息・活動予定を重ねて作ります。活動へ児童を合わせるのではなく、健康状態と覚醒、本人の反応を見ながら参加方法を調整します。
| 時間の要素 | 計画する内容 | 配置への影響 |
|---|---|---|
| 到着・引継ぎ | 当日の体調、物品、ケア | 看護と受入職員を同時確保 |
| 健康観察 | 個別の平常状態との比較 | 異常時の連絡担当 |
| 発達支援 | 姿勢、感覚、意思表出 | 児童指導員・保育士等 |
| 食事・注入 | 指示、摂取、観察 | 同時ケアと他児支援 |
| 休息・排泄 | 体位、移乗、プライバシー | 二人介助・静養空間 |
| 引渡し | 記録、物品、状態共有 | 送迎・家族対応 |
児童別予定を重ねると、注入や排泄が同時刻に集中する場面が分かります。時間をずらせるかは家庭の都合だけで決めず、医師の指示、児童の生活リズム、支援目標を確認します。
体調不良・欠席・入院を見込む
重心児は体調変化により利用を休んだり、入院が続いたりする場合があります。欠席を単なる売上減として扱わず、家族への連絡、相談支援との共有、退院後の再アセスメント、医師指示・機器・ケアの変更確認を行いましょう。
再利用時は、以前の手順をそのまま使わず、平常状態、薬剤、ケア時刻、移乗、送迎、緊急連絡を更新します。職員全員へ変更点を読み合わせ、必要なら短時間・厚い配置から再開するなど個別に検討しましょう。
欠席時の記録と報酬
欠席に関する連絡・相談を加算として評価できる場合でも、対象、回数、記録、連絡時期等の要件があります。欠席した事実だけで自動算定せず、2026年度の告示・留意事項、自治体の取扱いを確認してください。
開業後の運営会議
月次会議では、利用児の状態、個別支援計画、人員、医療物品、送迎、事故、報酬を別々の議題にせず、相互の影響を確認します。たとえばケア回数が増えれば、看護配置、活動時間、電池・消耗品、基本報酬・加算の確認が必要です。
会議の決定事項は、誰がいつまでに医師・家族・自治体へ確認するかを記録します。口頭で合意したまま申請書、運営規程、勤務表、個別手順が古い状態にならないよう変更管理を行いましょう。
開業後は、嘱託医、主治医、看護職員の役割を定期的に確認します。健康管理、個別指示、急変時の連絡先が重複・空白にならないよう、連携契約と児童別個票を更新してください。
よしだ行政書士事務所が重症心身障害児対応の児童発達支援開業を支援します
- 一般型・医療的ケア児対応・重心型のどれが適するかの整理
- 嘱託医・看護職員等の配置基準の確認
- 指定権者(宮城県・仙台市)との事前相談同行
- 指定申請書類・運営規程・安全計画等の作成支援
宮城県名取市を拠点に、宮城県全域を中心に東北6県からのご相談に対応しています。オンライン相談、訪問相談、土日祝日の予約相談も可能です。
まとめ
重症心身障害児を主対象とする児童発達支援は、定員5名という数字だけで設計できません。対象児、人員、設備、報酬、医療・安全、利用見込みをつなげた事業計画が必要です。
宮城県・仙台市での事業モデル全体は医療的ケア児・重症心身障害児対応の開業総合ガイドにまとめています。児童発達支援の開業全体の流れは児童発達支援の開業・指定申請完全ガイドも参考になります。
よくある質問
本記事は2026年9月2日時点で確認できる公的情報等をもとに作成しています。対象児の該当性、人員配置、基本報酬の算定は、児童ごとの状態や自治体の確認によって異なります。制度は改正されることがあるため、実際の判断・手続きにあたっては、宮城県・仙台市の担当窓口および専門家に個別にご確認ください。