放課後等デイサービスの避難確保計画とは?対象施設・作成・避難訓練を解説
「物件をハザードマップで確認したら、洪水浸水想定区域に入っていました。放課後等デイサービスを開業するなら、避難確保計画は必ず作らなければならないのでしょうか」
開業準備をしていると、指定基準や人員配置、設備、消防、建築といった項目にはどうしても目が向きますが、物件所在地の災害リスクの確認も同じくらい重要です。
特に、一定の災害リスクがある区域にある要配慮者利用施設については、水防法、土砂災害防止法、津波防災地域づくり法などに基づいて、避難確保計画の作成・報告や避難訓練が必要になることがあります。
ただし注意したいのは、「放課後等デイサービスだから全国一律で避難確保計画が必要」でも、「ハザードマップに色が付いていたら自動的に義務が発生する」でもないという点です。法定対象になるかどうかは、少なくとも次のような点を確認して判断する必要があります。
- 物件所在地
- 洪水・土砂災害・津波等の対象区域
- 要配慮者利用施設への該当性
- 市町村地域防災計画への位置付け
- 対象災害ごとの法令上の要件
- 所在地自治体の最新運用
また、法定対象かどうかにかかわらず、放課後等デイサービスは障害特性のある児童を預かり、送迎も行う事業です。物件契約前から災害リスクを把握し、非常災害対策、防災マニュアル、BCP、安全計画、消防計画などと整合した、実効性のある避難体制を整えることが大切です。
この記事では、2026年8月時点の国・宮城県・仙台市の公式資料をもとに、避難確保計画の対象施設、作成内容、提出、避難訓練、訓練結果報告、物件選びのポイントまで順番に解説します。
この記事の結論
- 放課後等デイサービスだからという理由だけで、全国一律に避難確保計画が必要になるわけではない
- 法定対象かどうかは、対象区域と市町村地域防災計画への位置付け等を確認して判断する
- 洪水、雨水出水、高潮、土砂災害、津波は制度上同じ扱いではない
- ハザードマップの確認は重要だが、それだけで法定対象を最終判断しない
- 対象施設では避難確保計画を作成し、市町村へ報告する
- 対象施設では計画に基づく避難訓練が必要で、訓練結果の報告も求められる
- 仙台市では2026年8月現在、対象施設に年1回以上の訓練と、実施後概ね1か月を目安とする結果報告を案内している
- 仙台市では2026年3月に津波災害警戒区域が指定され、津波についても対象確認が必要になった
- 避難確保計画と非常災害対策計画、防災マニュアル、BCP、安全計画、消防計画は目的・根拠が異なる
- 物件契約後に初めて災害リスクに気付くのではなく、契約前にハザードと避難の実現可能性を確認する
重要なのは、書類を作ること自体ではありません。「災害が迫ったとき、利用児童を安全な場所へ、間に合う時間で避難させられるか」を具体的に検証することが、避難確保計画の本質です。
契約前にどこまで確認すべきかを知りたい方向けです。
避難確保計画と指定申請の関係を整理したい方向けです。
自施設が法定対象になるかを確認したい方向けです。
避難訓練・訓練結果報告の実務を確認したい方向けです。
避難確保計画とは?
避難確保計画とは、一定の災害リスクがある区域に所在し、市町村地域防災計画に位置付けられた要配慮者利用施設等が、利用者の円滑かつ迅速な避難を確保するために作成する計画です。対象災害に応じて、水防法、土砂災害防止法、津波防災地域づくり法などが関係します。
計画では、単に「災害時は避難します」と書くのではなく、次のような事項を具体的に決めていきます。
- 施設の災害リスク
- 情報収集方法
- 職員の役割分担
- 避難を開始する判断基準
- 避難先・避難経路
- 利用者の誘導方法
- 必要な資機材
- 防災教育・避難訓練
仙台市が2026年7月に公表した社会福祉施設等向け手引きでも、施設の種別や立地条件など実態に即した計画を作成することが求められています。
放課後等デイサービスは必ず避難確保計画を作成する?
必ずではありません。
放課後等デイサービスは、障害児が利用する社会福祉系施設として要配慮者利用施設に該当し得ますが、サービス種別だけで法定義務が決まるわけではありません。一般的には、次の順番で確認していきます。
したがって、同じ放課後等デイサービスであっても、A事業所は法定対象、B事業所は対象外ということが普通に起こり得ます。
ハザード区域内なら必ず避難確保計画が必要?
ここは誤解が多いところです。ハザードマップ上で色が付いていることと、法令上の避難確保計画作成義務が生じることは、必ずしも同じではありません。
ハザードマップは、物件所在地の災害リスクを把握するうえで非常に重要な資料です。しかし法定義務の判断では、市町村地域防災計画への位置付けなど、さらに確認すべき要件があります。
特に内水については注意が必要です。例えば仙台市は、2026年3月更新のハザードマップ案内で、仙台市内水浸水想定区域図について「水防法に基づくハザードマップではない」と明示しています。つまり、「内水ハザードで色が付いたから、水防法上の避難確保計画が当然に必須」と単純化してはいけません。
一方で、法定対象ではない場合でも、実際に浸水するおそれがあるなら安全管理上の対策は必要です。防災マニュアルや非常災害対策、BCPに反映しておきましょう。
要配慮者利用施設とは?
要配慮者利用施設とは、社会福祉施設、学校、医療施設その他の、防災上の配慮を要する人が主として利用する施設をいいます。典型的には、高齢者施設、障害福祉施設、障害児支援施設・事業所、保育所、学校、医療機関などが含まれ得ます。
放課後等デイサービスでは、児童によって次のような事情があります。
- 自力歩行が難しい
- 危険の理解が難しい
- 急な環境変化でパニックになる
- 大きな音や人混みに強い不安がある
- 医療的ケアが必要
- てんかん発作等への備えが必要
そのため、一般の事業所より避難に時間がかかることを前提に、早い段階から避難準備・避難開始を考える必要があります。
市町村地域防災計画とは?
市町村地域防災計画は、その市町村における防災体制、災害予防、災害応急対策等を定める計画です。避難確保計画の対象判定では、この地域防災計画に掲載される要配慮者利用施設の一覧が重要になります。確認するときは、施設名称、所在地、施設種別、対象災害、水防法対象か、土砂災害防止法対象か、津波関係の対象かをチェックします。
開業準備中の新規事業所は、まだ施設一覧へ反映されていないことがあります。この場合、「一覧にないから絶対に対象外」と自己判断するのではなく、所在地市町村の防災担当部署へ確認するのが安全です。
対象になる災害の種類
避難確保計画で問題になる主な自然災害は次のとおりです。同じ「水害」でも制度が異なるため、洪水・内水・高潮をひとまとめにして判断しないことが大切です。
| 災害 | 主な確認区域・情報 | 主な法令 |
|---|---|---|
| 洪水 | 洪水浸水想定区域 | 水防法 |
| 雨水出水(内水) | 雨水出水浸水想定区域等 | 水防法上の指定状況を確認 |
| 高潮 | 高潮浸水想定区域 | 水防法 |
| 土砂災害 | 土砂災害警戒区域等 | 土砂災害防止法 |
| 津波 | 津波災害警戒区域等 | 津波防災地域づくり法 |
洪水の避難確保計画
洪水リスクを確認するときは、単に「浸水するか」だけでは不十分です。できれば、対象河川、想定浸水深、浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域、河岸侵食のおそれ、避難場所、避難経路、避難に必要な時間、道路の冠水リスクまで確認します。
例えば、浸水深が浅ければ必ず安全というわけではありません。事業所が1階にあり、車いす利用児童がいて、避難開始から安全な避難先まで30分以上かかるのであれば、早期避難の必要性は高くなります。
仙台市の2026年7月版手引きでは、家屋倒壊等氾濫想定区域または浸水深3m以上の区域などを「早期の立退き避難が必要な区域」として確認する考え方が示されています。
内水(雨水出水)への対応
内水氾濫は、河川の氾濫とは異なり、下水道や側溝の排水能力を超える雨などによって市街地に水がたまる現象です。放課後等デイサービスでは、事業所前の道路が冠水する、送迎車が動けなくなる、アンダーパスを通行できなくなる、保護者の迎えが困難になる、といった問題が起こり得ます。
ただし、自治体の「内水ハザードマップ」がそのまま水防法上の雨水出水浸水想定区域を示すとは限りません。仙台市の内水浸水想定区域図は、2026年8月時点で「水防法に基づくハザードマップではない」と案内されています。したがって、法定義務と実務上の安全対策は分けて整理しましょう。
高潮への対応
高潮は、台風や発達した低気圧等により海面が上昇し、沿岸部に浸水被害が発生する災害です。対象となる地域では、高潮浸水想定区域、想定浸水深、海岸・河口からの距離、避難先、避難経路などを確認します。
ただし、高潮リスクがない内陸部の放課後等デイサービスへ、一律に高潮対策を要求する必要はありません。なお、仙台市は2026年3月時点の公式案内で「高潮ハザードマップは作成していない」としています。仙台市内で高潮の法定対象を判断する際は、最新の区域指定・地域防災計画・市の防災担当部署の情報を確認してください。
土砂災害の避難確保計画
土砂災害では、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を確認します。対象となる現象は、主に急傾斜地の崩壊、土石流、地すべりです。
特に土砂災害は、発生してからの避難が極めて困難になる場合があります。避難経路自体が崖沿いや谷筋を通る場合には、「避難場所は安全でも、そこまで到達できない」ということもあり得ます。
宮城県も、土砂災害警戒区域内に立地し、市町村地域防災計画に名称・所在地が記載された要配慮者利用施設について、避難確保計画の作成・避難訓練の対象になることを案内しています。
津波の避難確保計画
宮城県・仙台市で放課後等デイサービスを開業する場合、津波は特に重要な論点です。宮城県は2026年3月23日、津波防災地域づくりに関する法律に基づく津波災害警戒区域を指定しました。これに伴い、仙台市も2026年8月の公式案内で、津波災害警戒区域内の要配慮者利用施設について、避難確保計画の作成・届出や訓練が必要になることを案内しています。
津波では、津波警報・大津波警報、津波浸水想定、津波災害警戒区域、高台、津波避難施設、垂直避難、徒歩避難の可否、車両避難の危険性、渋滞、送迎中の避難先まで具体的に考える必要があります。
津波は「警報が出てから避難方法を考える」のでは遅い場合があります。物件契約前に、児童を連れて現実的に避難できるかを確認することが重要です。
複数災害の対象になる場合
事業所によっては、洪水+土砂災害、洪水+津波、土砂災害+津波など、複数の災害リスクを抱える場合があります。必ず災害ごとに完全に別冊を作成しなければならないとは限りません。
国・自治体の様式では、一体的に作成できる場合があります。また、既存の消防計画や防災関係計画に、避難確保計画として必要な事項を追加する方法が認められることもあります。仙台市の2026年7月版手引きでも、既存の消防計画や地震等の災害計画に必要項目を追加し、避難確保計画として提出することができるとされています。
ただし、書類を一体化しても、法的根拠・対象災害・提出義務が一つになるわけではありません。
避難確保計画には何を書く?
国土交通省や自治体の手引き・ひな形を確認すると、概ね次の事項を整理します。
- 計画の目的・適用範囲
- 施設の所在地・構造・階数
- 利用者数・職員数
- 対象災害・想定浸水深・土砂災害警戒区域等
- 防災体制、情報収集・伝達方法
- 避難開始基準、避難先・避難経路・避難誘導方法
- 職員の役割、必要な資機材・備蓄
- 防災教育、訓練、必要に応じ自衛水防組織
重要なのは、ひな形の空欄を埋めることではありません。例えば「避難誘導担当2名」と書いても、児童15名のうち複数名が個別介助を必要とするなら、本当に2名で避難できるか検証が必要です。
避難開始の判断基準
避難開始は、「行政から避難指示が出たら動く」とだけ決めるのでは不十分です。要配慮者利用施設は避難に時間がかかるため、警戒レベル3相当の情報、高齢者等避難、河川の洪水予報・水位情報、大雨関係の防災気象情報、土砂災害関係情報、津波警報・大津波警報、周辺道路の冠水、施設独自の事前休業基準などを組み合わせて判断します。
仙台市は2026年5月29日から運用が始まった新たな防災気象情報体系を踏まえ、2026年7月版手引きで洪水・土砂災害時の体制確立例を示しています。
また、避難情報が必ず段階的に出るとは限りません。施設独自に「この情報が出たら利用受入れを中止する」「この段階で保護者へ連絡する」と決めておくことが実務上重要です。
避難先はどう決める?
「近所の指定避難所へ行けばよい」とは限りません。災害時の避難先を考える際は、指定緊急避難場所と指定避難所を区別します。指定緊急避難場所は、災害の危険から命を守るために緊急的に避難する場所です。指定避難所は、災害で自宅等へ戻れない人が一定期間滞在するための施設です。
さらに、津波では高台や津波避難施設、洪水では浸水区域外の安全な場所など、災害ごとに適切な避難先が異なります。事業所から近い場所でも、その災害に対応していなければ避難先として適切とは限りません。
垂直避難はできる?
垂直避難とは、建物の上階など、同じ建物内のより安全な場所へ移動する方法です。ただし、一律に「2階へ上がれば安全」と考えることは危険です。
確認すべきなのは、建物構造、使用階、想定浸水深、浸水継続時間、建物自体の安全性、家屋倒壊等氾濫想定区域か、土砂災害の影響、津波の想定、上階まで児童を移動できるかです。特に木造建物で強い氾濫流が想定される場合や、土砂災害特別警戒区域などでは、単純な垂直避難が適切とは限りません。
避難経路はどう決める?
避難経路も、地図上の最短ルートだけで決めないことが大切です。洪水浸水区域、内水による道路冠水、土砂災害警戒区域、崖、河川、橋梁、アンダーパス、狭い道路、津波到達方向、交通渋滞、積雪時の通行などを確認します。
「必ず2ルート作らなければならない」と一律に法令上の義務として断定することはできませんが、代替ルートを検討しておくことは実務上有効です。
利用児童の障害特性を計画へ反映する
放課後等デイサービスの避難計画では、一般的な施設以上に個別性が重要です。車いす、歩行困難、視覚・聴覚障害、感覚過敏、大きな音への恐怖、パニック、飛び出し、指示理解の難しさ、医療的ケア、てんかん、常用薬、吸引器等の医療機器などを考慮します。
避難訓練では「全員が外へ出られたか」だけでなく、誰に何分かかったか、どこで介助が必要だったか、職員数は足りたか、車いすは通れたか、薬・医療機器を持ち出せたか、人数確認が確実にできたかを確認しましょう。
送迎中の災害対応も必要
放課後等デイサービスは、送迎時間帯と災害発生が重なる可能性があります。送迎中は、事業所内の避難確保計画だけでは対応しきれません。そのため、防災マニュアル等に、送迎ルート上の洪水リスク、土砂災害警戒区域、津波浸水想定、冠水しやすい道路、アンダーパス、緊急退避場所、事業所へ戻るか別の安全な場所へ向かうか、運転職員と事業所との連絡方法、保護者への連絡を整理しておくと、実効性が高まります。
避難確保計画はどこへ提出する?
法定対象施設では、作成した避難確保計画を市町村長へ報告する制度があります。ただし、実際の提出先部署・提出方法・様式は自治体によって異なります。
仙台市の場合
2026年8月10日更新の仙台市公式案内では、避難確保計画を作成・修正した場合、仙台市危機管理局減災推進課へ提出することとされています。提出方法は郵送・FAX・メールが案内されています。また、計画本体だけでなく、チェックリスト等の提出が必要になる場合があるため、必ず最新の仙台市様式を使用してください。
仙台市以外の宮城県内
宮城県内でも、提出先は所在地の市町村です。防災担当課、危機管理課、総務課等、自治体によって窓口が異なります。県内で一律の様式・提出方法ではないため、所在地市町村の最新ホームページを確認してください。
新規開業時はいつ提出する?
全国一律に「指定申請の○日前まで」と決まっているものではありません。避難確保計画の法定手続は、障害児通所支援の指定申請とは別制度です。
- 物件契約前にハザードを確認する
- 防災担当部署に対象可能性を相談する
- 市町村地域防災計画への掲載状況・今後の掲載を確認する
- 対象となる場合は計画を作成する
- 自治体の案内に従って報告する
という流れが安全です。施設一覧への掲載時期など自治体運用による部分があるため、「開業後に言われてから作ればよい」と考えない方がよいでしょう。開業までのスケジュール全体は、放課後等デイサービス開業スケジュールもあわせてご確認ください。
指定申請時に避難確保計画を提出する?
障害児通所支援の指定申請と、避難確保計画の法定報告は別の手続です。
指定申請では、非常災害対策や安全管理に関する書類が確認されることがありますが、それだけで水防法等に基づく避難確保計画の報告手続を済ませたことにはなりません。逆に、防災担当部署へ避難確保計画を提出したからといって、指定基準上の非常災害対策が不要になるわけでもありません。指定申請の具体的な流れは、放課後等デイサービスの指定申請の流れもご確認ください。
避難訓練は必要?
対象施設では、避難確保計画に基づく避難訓練の実施が必要です。避難確保計画は、作成してファイルへ保存しておくための書類ではありません。実際に訓練を行い、避難開始判断は適切か、情報収集できたか、児童誘導はできたか、職員配置は十分か、避難所要時間は想定内か、避難経路に危険はないかを確認し、問題点を計画へ戻すことが必要です。
避難訓練は年何回?
法律上の規定と自治体の具体的運用を分けて確認する必要があります。国土交通省の現行手引きでは、毎年の避難訓練実施を前提とした説明がされています。さらに仙台市では、2026年8月現在、公式ページ上で「年1回以上」の訓練実施を明示しています。
したがって、仙台市の対象施設では、少なくとも年1回以上を基準に年間計画へ組み込む必要があります。仙台市以外の宮城県内については、所在地市町村の最新案内を確認してください。
訓練結果も市町村へ報告する?
現在は、対象となる要配慮者利用施設について、避難訓練を実施するだけでなく、訓練結果の報告も重要です。国土交通省の手引きでは、訓練実施後に市町村の担当部局へ訓練結果を報告し、実施後1か月以内を目安とする考え方が示されています。
仙台市も2026年8月現在、訓練は年1回以上、訓練後概ね1か月を目安に、「訓練実施結果報告書」を危機管理局減災推進課へ提出する運用を案内しています。
避難訓練で確認したいこと
放課後等デイサービスでは、次の項目まで訓練しておくと実践的です。
- 防災気象情報を誰が確認するか
- 避難開始を誰が判断するか、職員間でどう伝達するか
- 利用児童の人数確認、児童ごとの避難介助
- 車いす利用児童の移動、医療的ケア児への対応
- 常用薬・緊急薬の持出し
- 避難所要時間、保護者への連絡・引渡し方法
- 送迎中車両との連絡、事業所へ戻れない場合の対応
訓練後には、必ず振り返りを行います。「予定より10分余計にかかった」「玄関に児童が集中した」「職員1名が電話対応に取られた」などの課題は、計画を改善する重要な材料です。
非常災害訓練との違い
放課後等デイサービスには、指定通所支援基準に基づく非常災害対策もあります。避難確保計画上の訓練と、指定基準上の非常災害訓練は、内容が重なることがありますが、制度上は同一ではありません。
| 項目 | 避難確保計画上の訓練 | 指定基準上の非常災害訓練 |
|---|---|---|
| 主な根拠 | 水防法等 | 指定通所支援基準 |
| 主な対象 | 条件を満たす要配慮者利用施設 | 放課後等デイサービス |
| 対象災害 | 洪水・土砂災害・津波等 | 火災・地震・風水害等の非常災害 |
| 結果報告 | 法令・自治体運用に基づき市町村へ報告 | 別途、指定基準上の記録等 |
| 実施 | 計画に基づく訓練 | 定期的な避難・救出等の訓練 |
同じ日に実施できる内容があっても、「1回やればすべての制度を満たす」とは限りません。
非常災害対策計画との違い
| 項目 | 避難確保計画 | 非常災害対策計画 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 水防法・土砂災害防止法・津波防災地域づくり法等 | 指定通所支援基準 |
| 対象施設 | 条件付き | 放課後等デイサービス |
| 対象災害 | 洪水・土砂災害・津波等 | 非常災害全般 |
| 主な目的 | 円滑・迅速な避難の確保 | 非常災害に備えた具体的計画 |
| 提出 | 対象施設は市町村への報告 | 指定権者の運用確認 |
| 訓練 | 計画に基づく避難訓練 | 定期的な避難・救出等 |
非常災害対策について詳しくは、放課後等デイサービスの非常災害対策とは?避難計画・訓練・消防対応を解説をご覧ください。
防災マニュアルとの違い
防災マニュアルは、災害発生時に職員がどう動くかを具体化する実務文書です。例えば、地震直後の初動、119番通報、児童の安全確保、保護者への連絡、送迎中の判断、備蓄品の使用など、現場レベルの手順をまとめます。避難確保計画の対象外だから、防災マニュアルも不要ということにはなりません。
詳しくは、放課後等デイサービスの防災マニュアルとは?地震・火災・風水害への備えを解説もあわせてご確認ください。
BCPとの違い
BCPは業務継続計画です。避難確保計画が主に利用児童・職員の生命と身体を守り、安全に避難することを中心とするのに対し、BCPは、支援をどう継続するか、重要業務をどう維持するか、停電・断水時にどうするか、職員不足時にどうするか、どの業務から再開するかという事業継続・早期復旧を中心に考えます。
詳しくは、放課後等デイサービスのBCPとは?業務継続計画の作成・研修・訓練を解説をご覧ください。
安全計画との違い
安全計画は、児童の安全確保について年間を通じて計画的に取り組む制度です。施設・設備の安全点検、職員研修、訓練、保護者への周知、送迎等を含めた安全管理全般を扱います。避難確保計画は、その中でも特定の自然災害リスクについて、法令に基づき避難を確保する計画です。
放課後等デイサービスの安全計画とは?策定・研修・訓練・保護者周知を解説もご確認ください。
消防計画との違い
消防計画は、消防法令上の防火管理に関する計画です。主に、火災予防、防火管理、消防用設備、通報、消火、避難、消防訓練などを扱います。一方、避難確保計画は洪水・土砂災害・津波等の自然災害リスクに対する避難が中心です。両者は内容が重なる部分があるため、自治体の様式によっては一体的に整理できることがありますが、制度上の根拠は別です。
消防計画については、放課後等デイサービスの消防計画とは?作成・防火管理者・消防訓練を解説もご覧ください。
ここまで出てきた6つの計画・書類は、それぞれ根拠と目的が異なります。混同しやすいので、一覧で整理しておきます。
避難確保計画
- 根拠
- 水防法・土砂災害防止法・津波防災地域づくり法
- 目的
- 対象災害からの円滑・迅速な避難
非常災害対策計画
- 根拠
- 指定通所支援基準
- 目的
- 非常災害全般への備え
防災マニュアル
- 根拠
- 実務文書(任意整備)
- 目的
- 災害発生時の職員の初動手順
BCP
- 根拠
- 業務継続計画
- 目的
- 支援の継続・早期再開
安全計画
- 根拠
- 児童の安全確保に関する制度
- 目的
- 年間を通じた安全管理全般
消防計画
- 根拠
- 消防法令
- 目的
- 防火管理・消防訓練
ハザードマップを確認する
物件候補を見つけたら、少なくとも洪水、内水、土砂災害、津波、高潮(該当地域)、ため池等の地域固有のリスクを確認しましょう。仙台市では「仙台市総合ハザードマップ」で、津波、洪水、土砂災害、ため池、内水等をまとめて確認できます。
ただし、ハザードマップ上で色が付いていないから絶対安全という意味でもありません。周辺道路の低さ、崖、擁壁、河川、橋、アンダーパスなども現地確認しましょう。
物件契約前に確認する
放課後等デイサービスでは、物件契約後に「実は洪水リスクが高かった」「避難所まで児童を連れて歩けない」「津波避難エリアだった」「土砂災害特別警戒区域だった」と分かると、開業計画へ大きな影響が出ることがあります。
契約前には、ハザード区域、想定浸水深、建物階数・構造、垂直避難の可能性、避難場所、避難経路、土砂災害リスク、津波リスク、周辺道路、送迎ルート、市町村地域防災計画を確認してください。物件選びの視点は、放課後等デイサービスの物件選びもあわせてご覧ください。
ハザード区域なら放課後等デイサービスは開業できない?
ハザード区域に入っているからという理由だけで、一律に放課後等デイサービスを開業できないとは限りません。
ただし、災害リスクが高い物件では、避難計画、建物安全性、避難先、避難経路、保険、BCP、送迎、保護者への説明、職員確保などに影響します。また、土砂災害特別警戒区域では、建築・開発上の別の規制が関係することもあります。
「指定申請が通るか」だけではなく、「児童を現実に安全に避難させられる物件か」という視点で判断してください。
避難確保計画は一度作れば終わり?
終わりではありません。ハザードマップが更新された、市町村地域防災計画が改定された、避難場所や避難経路が変わった、職員配置が変わった、利用児童の障害特性が変わった、医療的ケア児の利用が始まった、建物を改修した、送迎ルートが変わった、訓練で課題が見つかった、実際に災害を経験した——こうしたときには見直しが必要です。
仙台市では、避難確保計画を修正した場合も市長へ報告する運用が示されています。
職員への周知
避難確保計画は、管理者だけが理解していても機能しません。職員全員が、どの災害が対象か、どの情報を確認するか、誰が避難を判断するか、誰が児童を誘導するか、どこへ避難するか、何を持ち出すか、保護者へ誰が連絡するかを理解している必要があります。非常勤職員や新規採用職員にも周知しましょう。
保護者への周知
保護者には、災害時の避難先、連絡方法、引渡し方法、事業所へ迎えに来ない方がよいケース、事前休業の基準などを共有しておくと、災害時の混乱を減らせます。法令上の周知義務の有無は制度ごとに確認する必要がありますが、実務上は重要な安全対策です。
未作成の場合の行政対応
対象施設が避難確保計画を作成しない場合、水防法や土砂災害防止法等に基づき、市町村長から必要な指示が行われることがあります。また、指示に従わない場合、その旨を公表できる仕組みがあります。「直接の報酬減算が見当たらないから作らなくてもよい」という考え方は適切ではありません。
避難確保計画未作成による報酬減算はある?
2026年8月時点の障害児通所支援報酬について確認した限り、「避難確保計画未作成減算」という名称の独立した減算は確認できません。ただし、これは避難確保計画を作成しなくてよいという意味ではありません。水防法等に基づく法定義務と、障害児通所支援の報酬上の減算制度は別です。
なお、2026年度の障害児支援報酬については改正が行われていますので、今後も最新のこども家庭庁・厚生労働省資料を確認してください。
運営指導では確認される?
放課後等デイサービスの運営指導では、指定基準上の非常災害対策、訓練、記録、安全管理等が確認対象となり得ます。また仙台市の地域防災計画では、要配慮者利用施設の避難確保計画について、関係部局による確認・点検に触れている資料があります。
そのため、避難確保計画、市町村への提出記録、避難訓練記録、訓練結果報告、非常災害訓練、防災マニュアル、職員周知記録などを整理し、いつでも説明できる状態にしておくことをおすすめします。
開業前チェックリスト
物件候補時
- 洪水ハザードを確認した
- 内水ハザードを確認した
- 土砂災害を確認した
- 津波を確認した
- 必要に応じ高潮等も確認した
- 避難場所を確認した
- 避難経路を確認した
- 送迎ルートを確認した
契約前
- 市町村地域防災計画を確認した
- 要配慮者利用施設への該当可能性を確認した
- 必要に応じ自治体防災担当へ相談した
- 想定浸水深を確認した
- 建物構造・階数を確認した
- 垂直避難が可能か検討した
- 利用児童を安全に避難させられるか検討した
開業前後
- 対象施設であれば避難確保計画を作成した
- 必要な提出・報告を行った
- 職員へ周知した
- 避難訓練を実施した
- 訓練結果の報告要否・期限を確認した
- 非常災害対策計画と整合した
- 防災マニュアルと整合した
- BCPと整合した
- 安全計画と整合した
- 消防計画と整合した
宮城県・仙台市で開業する場合の確認ポイント
仙台市内
仙台市では2026年8月時点で、避難確保計画に関する専用ページ、社会福祉施設等向け手引き、ひな形、チェックリスト、訓練結果報告書が公開されています。特に重要な最新情報は次のとおりです。
- 2026年7月版「避難確保計画作成の手引き(社会福祉施設等)」が公開
- 2026年8月10日、避難確保計画の案内ページが更新
- 計画作成・修正時は危機管理局減災推進課へ提出
- 避難訓練は年1回以上
- 訓練結果は実施後概ね1か月を目安に報告
- 洪水・土砂災害に加え、2026年3月の津波災害警戒区域指定を踏まえ津波対象施設にも手引き・ひな形を案内
- 仙台市総合ハザードマップで津波、洪水、土砂災害、ため池、内水等を確認可能
また、仙台市内水浸水想定区域図は、水防法に基づくハザードマップではないとの明示があるため、法定対象判定では注意が必要です。
仙台市を除く宮城県内
仙台市以外では、所在地市町村の地域防災計画、要配慮者利用施設一覧、ハザードマップ、避難確保計画の様式、提出先、提出方法、訓練結果報告を市町村ごとに確認します。
宮城県は県全体向けに水防法・土砂災害防止法に関する情報を提供していますが、実際の計画報告先は所在地市町村となるため、「宮城県内なら全部同じ手続」と考えないようにしてください。
よくある間違い
「ハザードマップに色が付いている=必ず法定対象」
誤りです。ハザード確認は第一歩ですが、市町村地域防災計画等まで確認します。
「放デイなら全事業所で避難確保計画が必須」
誤りです。立地・対象区域・地域防災計画への位置付け等によって異なります。
「非常災害対策計画があるから避難確保計画はいらない」
誤りです。別制度です。ただし必要事項を満たしたうえで一体化できる場合があります。
「BCPを作ったから大丈夫」
BCPの中心は業務継続・早期再開です。避難確保計画の代わりにはなりません。
「避難訓練をしたが記録も報告もしていない」
対象施設では訓練結果報告が求められます。仙台市では実施後概ね1か月を目安に報告します。
「避難場所は一番近い学校にした」
その学校が対象災害の避難先として安全か確認が必要です。
よしだ行政書士事務所が避難確保計画の整備を支援します
- 物件候補の災害リスク・法定対象可能性の確認サポート
- 避難確保計画の作成、非常災害対策計画・防災マニュアル・BCP・安全計画・消防計画との整合確認
- 市町村への提出・避難訓練結果報告に関するご相談
宮城県名取市を拠点に、宮城県全域を中心に東北6県からのご相談に対応しています。オンライン相談、訪問相談、土日祝日の予約相談も可能です。
まとめ
放課後等デイサービスの避難確保計画は、「ハザードマップに色が付いていたら雛形を提出する」というだけの制度ではありません。
特に放課後等デイサービスでは、児童の障害特性、送迎、保護者への引渡し、医療的ケア、職員配置などを考える必要があります。避難確保計画は、指定申請のためだけに用意する書類ではありません。
「大雨や津波が迫ったとき、この事業所で本当に子どもたちを安全に避難させられるか」——この問いに具体的に答えられる計画にすることが最も重要です。
宮城県・仙台市で放課後等デイサービスの開業を検討している場合は、物件契約前の段階から、指定基準だけでなく、建築・消防・ハザード・避難・防災体制まで一体的に確認することをおすすめします。関連する書類整備については、放課後等デイサービスで必要な規程・指針・マニュアル一覧、開業・指定申請の全体像は放課後等デイサービスの開業・指定申請総合ガイドもあわせてご覧ください。
- 放デイ
- 放課後等デイサービス
- 要配慮者利用施設
- 社会福祉施設、学校、医療施設その他の主として防災上の配慮を要する者が利用する施設
- 区域指定とハザード情報の違い
- 「洪水浸水想定区域」等の法定区域指定と、市町村が独自に作成する参考ハザード情報は、法的な位置付けが同一とは限りません
- 最新情報の確認
- 自治体の地域防災計画・要配慮者利用施設一覧は改定されるため、開業時点の最新版を確認してください
- 本記事の性質
- 本記事では一般的な制度整理を行っており、個別物件の法的対象判定は所在地・区域指定・地域防災計画等を確認して行う必要があります
参考資料
国
- 国土交通省「要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き」 https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/
- 国土交通省「要配慮者利用施設における避難確保計画」関係資料・避難訓練実施ガイド
- e-Gov法令検索 水防法 https://elaws.e-gov.go.jp/
- e-Gov法令検索 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 https://elaws.e-gov.go.jp/
- e-Gov法令検索 津波防災地域づくりに関する法律 https://elaws.e-gov.go.jp/
- こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」 https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku/r8hoshukaitei
宮城県
- 宮城県「要配慮者利用施設の避難確保計画の作成等が義務化されました!」 https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kasen/youhairyo-hinankakuhokeikaku.html
- 宮城県「土砂災害防止法」 https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sabomizusi/doshashinpo.html
仙台市
- 仙台市「要配慮者利用施設における避難確保計画作成の義務化について」 https://www.city.sendai.jp/kekaku/kurashi/anzen/saigaitaisaku/fusuigai/hinankakuhokeikaku.html
- 仙台市危機管理局「避難確保計画作成の手引き(社会福祉施設等)」令和8年7月
- 仙台市「ハザードマップ等(各種災害の危険予測地図)」 https://www.city.sendai.jp/kikikanri/kurashi/anzen/saigaitaisaku/hazardmap/map.html
- 仙台市「仙台防災ハザードマップ」 https://www.city.sendai.jp/anzensuishin/kurashi/anzen/saigaitaisaku/hazardmap.html
- 仙台市「宮城県による津波災害警戒区域の指定について」 https://www.city.sendai.jp/anzensuishin/tsunamisaigaikeikaikuiki.html
情報確認日:2026年8月26日