工事経歴書とは、過去に施工した工事の実績を一覧にした書類で、建設業許可の新規申請・更新・毎年の決算変更届で必ず提出が必要な書類です。
「工事経歴書って聞いたことはあるけど、具体的に何を書けばいいの?」
宮城県内の建設会社経営者から、申請準備の段階でよく受ける質問です。工事経歴書は建設業許可申請における重要書類のひとつですが、記載ルールが細かく、誤った書き方をすると審査で指摘を受けることもあります。
この記事では、宮城県の建設業許可申請の手引きをもとに、工事経歴書の基本から具体的な書き方、そして絶対にやってはいけない注意点まで、わかりやすく解説します。
目次
1.結論:工事経歴書とは何か
工事経歴書(様式第二号)とは、自社が過去に完成させた工事・現在施工中の工事の実績を一覧形式でまとめた書類です。
📖 工事経歴書の役割
「この会社は本当にこの業種の工事をしてきたのか」を、宮城県の審査担当者が確認するための書類です。経営業務の管理責任者や専任技術者の実務経験を裏付ける資料としても使われます。
「経管の要件については『【宮城県】建設業許可の経営管理者(経管)になるための要件を徹底解説』をご覧ください。」
工事経歴書は、許可を受けている(または受けようとする)業種ごとに、1枚ずつ作成する必要があります。複数業種の許可を申請する場合は、業種の数だけ作成することになります。
2.工事経歴書が必要になる3つの場面
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| ①新規申請 | これから許可を取る業種について、過去の実績を証明するために提出 |
| ②更新申請 | 許可を維持していることを証明するため、直近の実績を提出 |
| ③毎年の決算変更届 | 事業年度終了後4か月以内に、その年の実績を毎年提出 |
⚠️ 決算変更届を忘れると大変なことに
決算変更届は許可を持っている限り、毎年必ず提出する義務があります。提出を怠ると、5年ごとの更新ができなくなり、許可が失効するリスクがあります。
「決算変更届の提出期限や手続きの流れは『宮城県版 決算変更届って何?』で詳しく解説しています。」
3.完成工事と未成工事の記載方法
工事経歴書には「完成工事」と「未成工事」を分けて記載します。
完成工事の記載方法
完成工事は、請負金額が大きい工事から順に記載していきます。経営事項審査を受けるかどうかで、記載のルールが少し異なります。
| 区分 | 記載のルール |
|---|---|
| 経審を受けない場合 | 元請・下請を問わず、請負金額の大きい工事から記載。完成工事高の7割を超える、または20件に到達したら終了 |
| 経審を受ける場合 | まず元請工事を優先して記載し、一定の条件で下請工事も追加していく2段階方式 |
💡 重要なポイント
請負金額は税込・税抜どちらでも記載可能ですが、経営事項審査を受ける場合は「税抜」での記載が必須です。様式第三号と表記を揃える必要があります。
未成工事の記載方法
未成工事(まだ完成していない工事)についても、元請・下請を問わず、請負金額の大きい順に記載します。
- ● 記載件数に制限はなく、主な未成工事を適宜記載する
- ● 請負金額は千円未満を切り捨てて記載する
4.記載してはいけない・記載できない工事
工事経歴書に記載できるのは「建設業の営業(建設工事の完成を請け負う営業)」に該当するものだけです。次のような業務は対象外となるため、記載することはできません。
✖ 工事経歴書に記載できない業務
- ✖ 産業廃棄物等の収集・運搬業務
- ✖ オペレーターが付かない建設機械のリース
- ✖ 樹木の剪定・除草・伐根・伐採
- ✖ 除雪作業
- ✖ 道路・河川等の維持管理業務(一部の修繕・補修を含む)
- ✖ 測量・設計・地質調査
- ✖ ビル等の清掃業務
- ✖ 電気設備・消防施設・機械設備の保守点検業務
- ✖ 消耗部品の交換
- ✖ 工事現場で作業に従事する人員の供出(いわゆる人工出し)
💡 例外:工事完成を目的とした部分は計上できる
「維持管理業務」という名称の契約でも、新設や改良など工事完成を目的とした部分が含まれている場合は、その部分を完成工事高に含めることができます。判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
5.工事経歴書の記載ルール7つのポイント
①業種ごとに1枚作成する
許可を受けている(または受けようとする)建設工事の種類ごとに、それぞれ別の用紙で作成します。
②少額契約の合算はNG
請負金額が少額であっても、複数の契約を「ほか〇件」とまとめて合算記載することはできません。1件ずつ正確に記載する必要があります。
③1件の契約で複数工事がある場合
一定期間の基本契約や、1件の請負契約で複数の工事を施工する場合は、契約1件分の請負金額総額で記載します。工事名は「〇〇〇〇(施工場所)ほか〇件□□□□工事」のように記載します。
④1件の契約を業種ごとに分割するのもNG
附帯工事などで1件の契約に複数の工種が含まれる場合、それを業種ごとに分割して記載することはできません。見積書等を確認し、費用割合が最も大きい工種に計上します。
⑤請負代金は千円未満切り捨て
記載する金額は千円未満を切り捨てます。
⑥税込・税抜の統一
様式第三号(直前3年の各事業年度における工事施工金額)と税込・税抜の表記を揃える必要があります。経営事項審査を受ける場合は税抜が必須です。
⑦一式工事は原則「元請」のみ計上
土木一式工事・建築一式工事は「総合的な企画、指導、調整のもとに工作物を建設する工事」と定義されており、原則として元請として請け負った工事のみが計上対象です。下請として一部のみを請け負った工事は、対応する専門工事の業種に計上します。
6.【最重要】虚偽記載は絶対にNGです
ここが今回最もお伝えしたいポイントです。
⚠️ 工事経歴書は絶対に偽装・いい加減な記載をしてはいけません
「専任技術者の実務経験が足りないから、工事経歴を水増ししよう」「許可が欲しいから、やっていない工事を書こう」——こうした行為は、すべて建設業法違反です。
虚偽記載が発覚するとどうなるか
- ● 不正の手段により許可を受けたとして、許可が取り消される
- ● 建設業法第50条に基づく罰則(罰金等)の対象になる
- ● 許可取消から5年間は、再度許可を受けることができなくなる
- ● 会社の社会的信用が大きく損なわれる(公共工事の指名停止等のリスクも)
📖 建設業法の規定
許可申請書又はその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があった場合、または重要な事実の記載が欠けている場合は、許可を受けることができません(建設業法第8条)。また、不正の手段により許可を受けたことが判明した場合、許可の取消事由になります。
「ちょっとくらいなら」が命取りになる理由
工事経歴書は、専任技術者の実務経験証明など、他の申請書類とも密接に関連しています。一部を偽ると、関連する書類との整合性が取れなくなり、審査の過程で矛盾が発覚するリスクが非常に高い書類です。
また、許可取得後に決算変更届として毎年提出を続けるため、最初に虚偽の記載をしてしまうと、その後も継続的に辻褄を合わせ続けなければならなくなります。
✅ 正しい対応方法
実務経験や工事実績が要件に届かない場合は、無理に書類を作るのではなく、要件を満たす別のルート(補佐経験や、必要年数を待つなど)を専門家と一緒に検討することが正しい対応です。よしだ行政書士事務所(宮城県仙台市)では、要件を満たさない場合の代替案についてもご相談に応じています。
7.工事経歴書でよくある間違い
| よくある間違い | 正しい対応 |
|---|---|
| 少額工事を「ほか5件」とまとめて記載 | 1件ずつ正確に記載する |
| 下請工事を建築一式工事として計上 | 一式工事は原則元請工事のみ計上 |
| 税込・税抜の表記が様式第三号と不一致 | 必ず両方の様式で表記を統一する |
| 除草・清掃業務を完成工事高に計上 | 建設業の営業に該当しないため計上不可 |
| 決算変更届を提出し忘れる | 事業年度終了後4か月以内に必ず提出 |
8.よくある質問(FAQ)
Q. 工事経歴書はどんな時に必要ですか?
A. 建設業許可の新規申請、業種追加、5年ごとの更新、そして毎年の決算変更届で必ず提出が必要です。許可を受けている業種ごとに1枚ずつ作成します。
Q. 工事経歴書に記載する工事に件数の上限はありますか?
A. 完成工事については、経営事項審査を受けない場合は最大20件程度を目安に、請負金額の大きい順に記載します。未成工事には件数制限がなく、主な工事を適宜記載します。
Q. 少額の工事はまとめて1行で書いてもいいですか?
A. できません。請負金額が少額であっても「ほか〇件」とまとめて合算記載することは認められていません。1件ずつ正確に記載する必要があります。
Q. 除草作業や清掃業務も工事経歴書に書けますか?
A. 書けません。除草、清掃、保守点検などは「建設業の営業」に該当しないため、工事経歴書への記載対象外です。これらは損益計算書上「兼業事業売上高」として扱われます。
Q. 実務経験が足りない場合、工事経歴書を多めに書いてもいいですか?
A. 絶対にやめてください。実態と異なる記載は虚偽記載に当たり、建設業法違反として許可取消・罰則の対象になります。要件が足りない場合は、別のルートを専門家に相談することをおすすめします。
Q. 仙台市の建設会社ですが、工事経歴書の作成を相談できますか?
A. もちろんです。当事務所では、工事経歴書の作成サポートはもちろん、記載内容の整合性チェックまで一括して対応しています。
Q. 工事経歴書の作成だけ依頼することはできますか?
A. 可能です。新規申請全体の依頼のほか、工事経歴書の作成のみ、決算変更届の代行のみといった部分的なご依頼にも対応しています。詳しくはお問い合わせください。
9.まとめ
工事経歴書についてまとめます。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 工事経歴書とは | 過去の工事実績を一覧にした書類(様式第二号) |
| 必要な場面 | 新規申請・更新・毎年の決算変更届 |
| 記載対象外の業務 | 除草・清掃・保守点検・人工出し等 |
| 少額工事の扱い | まとめて合算記載は不可、1件ずつ記載 |
| 虚偽記載のリスク | 許可取消・罰則・5年間の再申請不可 |
工事経歴書は、形式的な書類に見えて、実は許可の根幹に関わる重要な資料です。正確に・誠実に作成することが、長く事業を続けていくための土台になります。
「建設業許可の取得要件の全体像は『【宮城県】建設業許可取得の5つの要件は何?』で確認できます。」

行政書士 吉田 貴之(よしだ たかゆき)
宮城県名取市を拠点に建設業許可・
産業廃棄物収集運搬許可を専門に
サポートしています。
要件確認から申請まで一括代行。
初回相談・要件診断は無料です。
📞 022-382-8723








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